緑さん

□なまえ 緑×紫
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side杏果


「ありちゃん」

「あーりちゃんっ」

「やっさん!」





れにが私を呼ぶ声は、いつも優しい。




「ありちゃん…?どうしたの…?」


…ほら、今だって。


なんだか思うようにお仕事ができずに、楽屋から出てきて屋上に来た私。




「れに…」


来てくれるんじゃないか、って思ってた…、でも。

いつまでも甘えてばっかじゃダメだよね。







「なんでもないよ。ちょっと、外の空気吸いに来ただけ」



めいっぱいの笑い顔をつくって、

だから大丈夫、寒いし戻ってて良いよ、なんて。




「…じゃあ、あたしも、外の空気、吸う」


…あぁ、もう。
これだかられには、お人好しなんて言われるんだ。



「……バカ、」

「バカはそっちだもん…、ありちゃんのバカ」



ゆっくり近づいてくるその姿に、もう、来ないで、なんて言えない。


自分の甘さに苦しくなって、目の前がゆっくりと歪んだ。



「れにごめん…、ごめん……」

「ちょっ、なぁんで泣くのよ〜…」



なんで、って、いつまでも弱い自分に、いつまでも優しいれにに、泣けてくるんだよ。





「あーりちゃん…、」

「れに……」



泣かないで、なんて隣に座って、頭をポンポンと撫でてくれる。


ごめん、ごめんね、なんて呟きながらも、私は必死にその身体に顔をうずめて泣いた。









「ありちゃん、もう少しここにいよっか」

私が泣き止んだ頃、上から聞こえて来た優しい声。


寒いよ?なんて呟けば、ありちゃんが隣にいるからあったかいよ、なんて。







「れに……」
「んー…?」
「ありがとね…」


見上げれば、どういたしまして、と、笑う顔。











「…そろそろ行く?」

少しの間、2人でぼーっとした後、れにがぽつんと呟いた。


うん、と頷いて、立ち上がる。




「…ほら、手ぇつなご?」

「今日だけだからね…!」


素直じゃないヤツー!なんて、そんなの私が一番分かってるよ。










「ありちゃん!行こ!」


れにの声が、私を呼ぶ。
私は、れにの声が好き。


だからこれからも、迷わず、呼んでほしいな。



この先もずっと、れにのそばにいたいから…。





Fin.



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