緑さん

□束の間の休息 赤×緑(たまに紫)
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side夏菜子

「…杏果、」
「あ、夏菜子おつかれー。…帰んないの?」

杏果が来てから、まぁ当たり前の事だけど、杏果もレッスンに一緒に参加して。

プロ意識なのか、疲れてるだろうに全く間違えずにやりきった杏果は、レッスン終わり、最後まで残ってた。


「ねぇ、このあと時間ある?」
「あるけど…。ほんとにどうしたの?」

杏果の、バカ。
ほんとにどうしたの、はこっちのセリフだよ。


いいからいいから、なんて言って、腕を引っ張って仮眠室に連れ込む。

「失礼しまーす、って、れに。なに、寝てんのよ笑」
「あっ、なに、夏菜子とありちゃんじゃん」

部屋に入ったられにがいてびっくりしたけど、それは、私の考えがれににバレてたんだ、って気づいて。


まるでたまたま仮眠室にいました、って感じで接してくれたれにだけど、目と目で合図して、コンタクトを取った。


「夏菜子…?眠たいの?」
「違うよ〜。…ほら、一緒にここ、座ろ?」

とにかく杏果を座らせなきゃ、って思って。
ベッドの上、わたしの隣に、杏果を座らせた。


「なぁに、いいなぁ夏菜子だけー。あたしもありちゃんの隣行くー!」

案の定、れには杏果のもう片方の隣に座って。
杏果は、私とれにに挟まれる形になった。



「夏菜子、ここでなにするの?」
「杏果とまったりする」

…少しでも、肩の力を抜いて欲しくて。


頑張り屋さんな杏果だけど、たまには自分の身体も大切にしてほしいし、なにより、ここに居場所があるんだよ、って、分かって欲しいな。


「ありちゃんさー、寝てないでしょ?」
「うえっ…、」
「その反応、正解だな〜?」

れにの質問にうろたえた杏果に、ほんとなの?と聞くと、俯いて頷いた。


「そっかぁ…。杏果、がんばってるもんね」

よーし。今日は珍しく、私がサービスしてあげよう。


「ほら、おいで!」

ひざをぽん、と、叩く私に、何事かと顔を上げた杏果だけど。

いつもなら恥ずかしがって来ないのに、今日は何故だか、素直に私の膝に頭を乗せた。


「じゃああたしは、ぽんぽんしてあげる」

れにが、杏果の肩を優しく叩いて。
私も、頭を優しく撫でて。


「今日はサービスデーなんだからね〜?」

ふざけて言った私だけど、小さく杏果が笑ってくれたから、まぁいいや。



「もーしもー…。つーよーいーかーぜーがー…。ふーいてー…」

子守唄のように曲を唄うれにと、それに合わせて小さく口ずさむ杏果。

こうやって見たら、ほんとに姉妹みたい笑



「なぁに夏菜子ちゃん笑ってんのさー。夏菜子ちゃんも歌うんだよー」

ほんと、れに、ムチャぶりなんだから。


でもほら。
そのおかげで、来た時と比べてだいぶ柔らかくなった、杏果の顔。

…ありがとね、れに。


「あーあー、あたしも眠くなって来た!ちょっとあたし、先帰るわー」

タイミングを見て、れにが先に帰宅。


杏果はずっと、れにに手を振っていた。
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