緑さん
□束の間の休息 赤×緑(たまに紫)
2ページ/3ページ
side夏菜子
「…杏果、」
「あ、夏菜子おつかれー。…帰んないの?」
杏果が来てから、まぁ当たり前の事だけど、杏果もレッスンに一緒に参加して。
プロ意識なのか、疲れてるだろうに全く間違えずにやりきった杏果は、レッスン終わり、最後まで残ってた。
「ねぇ、このあと時間ある?」
「あるけど…。ほんとにどうしたの?」
杏果の、バカ。
ほんとにどうしたの、はこっちのセリフだよ。
いいからいいから、なんて言って、腕を引っ張って仮眠室に連れ込む。
「失礼しまーす、って、れに。なに、寝てんのよ笑」
「あっ、なに、夏菜子とありちゃんじゃん」
部屋に入ったられにがいてびっくりしたけど、それは、私の考えがれににバレてたんだ、って気づいて。
まるでたまたま仮眠室にいました、って感じで接してくれたれにだけど、目と目で合図して、コンタクトを取った。
「夏菜子…?眠たいの?」
「違うよ〜。…ほら、一緒にここ、座ろ?」
とにかく杏果を座らせなきゃ、って思って。
ベッドの上、わたしの隣に、杏果を座らせた。
「なぁに、いいなぁ夏菜子だけー。あたしもありちゃんの隣行くー!」
案の定、れには杏果のもう片方の隣に座って。
杏果は、私とれにに挟まれる形になった。
「夏菜子、ここでなにするの?」
「杏果とまったりする」
…少しでも、肩の力を抜いて欲しくて。
頑張り屋さんな杏果だけど、たまには自分の身体も大切にしてほしいし、なにより、ここに居場所があるんだよ、って、分かって欲しいな。
「ありちゃんさー、寝てないでしょ?」
「うえっ…、」
「その反応、正解だな〜?」
れにの質問にうろたえた杏果に、ほんとなの?と聞くと、俯いて頷いた。
「そっかぁ…。杏果、がんばってるもんね」
よーし。今日は珍しく、私がサービスしてあげよう。
「ほら、おいで!」
ひざをぽん、と、叩く私に、何事かと顔を上げた杏果だけど。
いつもなら恥ずかしがって来ないのに、今日は何故だか、素直に私の膝に頭を乗せた。
「じゃああたしは、ぽんぽんしてあげる」
れにが、杏果の肩を優しく叩いて。
私も、頭を優しく撫でて。
「今日はサービスデーなんだからね〜?」
ふざけて言った私だけど、小さく杏果が笑ってくれたから、まぁいいや。
「もーしもー…。つーよーいーかーぜーがー…。ふーいてー…」
子守唄のように曲を唄うれにと、それに合わせて小さく口ずさむ杏果。
こうやって見たら、ほんとに姉妹みたい笑
「なぁに夏菜子ちゃん笑ってんのさー。夏菜子ちゃんも歌うんだよー」
ほんと、れに、ムチャぶりなんだから。
でもほら。
そのおかげで、来た時と比べてだいぶ柔らかくなった、杏果の顔。
…ありがとね、れに。
「あーあー、あたしも眠くなって来た!ちょっとあたし、先帰るわー」
タイミングを見て、れにが先に帰宅。
杏果はずっと、れにに手を振っていた。