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□心地よさ
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※梅雨入りシリーズ※
朝、綺麗な青空が広がってたから天気予報なんて見ないで出たらこのザマだ。
あぁ、
時季的に梅雨入りのシーズンだった
なんて考えても、もう遅い。
道端の少し大きめの木の下で雨宿り。
まだ家まではだいぶあるし、こんな日に限って1人で帰宅。
「ミカサ待ってれば良かった…」
用事があるとかで先に帰って良いって言われたけど、待ってれば濡れずに済んだはず
前に急に雨になった時はミカサの折り畳み傘で助かった記憶があったから。
女子力高いやミカサは…
「それに比べて私はハンカチすら持ってないとは…」
制服や髪が雨に濡れて冷たい。
暖かくなったとは言えさすがに少し寒い気がした。
このまま止むまで待つ?
てか止みそうにないよね、この土砂降りじゃ…
待っててもダメだし
これ以上濡れても、どうせ一緒だから走って帰ろうかな、
そう思って木の下から出ようとしたら私を呼ぶ声が聞こえた。
「え?」
「あ!やっぱりそうだ、2組の名無しさんだよね?」
「あ、うん。」
私の名前を呼んだのは隣のクラスのベルトルト君だった。
よく知ってる訳じゃない、喋った事なんてもちろんない。けれど女子の間では有名で彼を好きな子はたくさんいる。
「傘忘れたの?あ、これ良かったら使って?」
彼から手渡されたのは淡い水色のハンカチだった。余りにも綺麗な色だったから受け取れずにいたら、風邪引くよ。なんて優しく顔を拭かれた。
「家まで送っていくよ」
「あ、有難う。じゃ遠慮なく…」
断る理由も無かったからベルトルト君の傘に入れてもらう事に。
何だかちょっと恥ずかしいような、気まずいような
「あ!ハンカチ!…洗って返すね、さっきの貸して?」
「大丈夫だよ、気にしないで名無しさん。」
「でも悪いし、今だって傘に入れてもらってる訳だから…何かお礼でもしないと…」
私がそう言うとベルトルト君の顔が少し赤くなった。
「じゃ、じゃあさ…お礼として…僕と、その…友達になって…くれませんか?」
「…友達?もちろん!そんなんで良いの?」
うん、と頷く彼
高身長で大人っぽい感じだと思ってたけど
何だか可愛く見えた。
「良かった…断られたら僕どうしようかと…」
「断ったりしないよ!ベルトルト君と友達かぁ〜嬉しいなぁ」
なんて私が言うとまた照れる。
母性本能が擽ぐられる、っていうのはこういう事なんだ!ってのを知れた。
ジメジメした空気だけど、何故か傘の中だけは心地よくて
ずっといたいと思ってしまった。
fin.
(そういえば、何で私の名前知ってたの?)
(いや…それは…あの…秘密)
(何で?教えてよ〜)
(秘密ったら秘密!)
※
ベルトルトに片想いされてたヒロインちゃん。
名前を知ってたのは、ずっとヒロインちゃんを好きだったから!