異譚・藤梅催花

□1. 藤浪現る《前》
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――花びらが舞う。


光の中に現れた、しなやかな体躯、艶やかな黒髪、滑やかな白い肌、整った顔立ち、薄く紅い唇。
その清らかで美しい存在は、藤色の神秘的な瞳で私を見ると、ふわりと可憐に微笑んだ。

「加藤国広と申します。 ......ふふ、嫁入り道具は初めてかしら?」

そう名乗った中性的な声は、とても優しく柔らかで、心地好かった。

 『加藤国広』

いかにも男性的な名前である。
日本刀に付けられた“号”だと知らなければ、ごくごく一般的な日本人男性の氏名だと思うだろう。

「......と、口上なので一応言ってみたものの......初めてじゃないですよね? ......ん? いや待てよ、今生では初めまして、なんですかね?」
「えーっと......、」

......だがしかし、そう名乗った付喪神の姿はどう見ても、
......その、顕現した刀剣男士の姿はどう見ても、

「......女の子?」
「あ、やっぱり女に見えます?」

その容姿はどう見ても美少女。
強いて言えば、『日本刀を持った女子高生』だった。

もしかして:男の娘? 刀剣女士?














いやいやいやいや、ちょっと待って?!!!!
確かに初期刀に選んだのは『国広』なんだけど!!!!
確かに私、「『国広』寄越せくれ下さい!!!!」なんて言って、強請っちゃいましたけれども!!!!
「コレジャナイ」とか言いづらい!!!!

「主様?」

あ、コテンって首傾げてる。
うっわ、何この子、くっそ可愛い......


......じゃなくて!!!!

事の発端は、たった数分前......いや、私の拙い頭と精神ではあまりにもキャパオーバーしていて、数時間前だったようにも思える。

【初期刀に『山姥切国広』を選ぼうとしていた私の前に、『加藤国広』が現れた!】
初期刀として登録しますか?
[はい]or[いいえ]


......とりあえず、どっから説明したらいいのコレ?


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