異譚・藤梅催花

□6. 花言葉と色の名前
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火が、消えていく。
暗闇に、俺の意識は引き戻される。

『......チッ、』

歪みが残る掌を見て、舌打ちをした。
焼失する醜態を晒しても、こちら側に戻されれば、焦げ一つ残らない。

『忌々しか......。』

ただ、あの子に触れた感触が、未だこの手に残っている......。
それが、どうにも切なくて仕方がない。


『......藤、』


潤んだ藤色の瞳を思い出す。


――......煌?


......ああ、現存してくれた。
俺よりも、ずっと長く、現存し続けてくれた。
ずっと清らかなまま、美しい刀の付喪神に成ってくれた。
......それだけで、良かったのに。
それだけで充分だと、願ったはずなのに。


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