ヒジキ小説
□ヒジキ→キヒジ
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もう昼を過ぎて、夕方を過ぎて。外の時間とほぼ無縁の生活をしている俺にとって、なぜか少し、落ち着く時間。
今日はこーすけがどういうわけか朝早くからまたラスベガスへ飛びたった。
しょうがないからお土産要求してやったよ。俺偉い。
昼間はまあずっと動画の編集して、次の動画のアイデア考えてたな。
そんで今も何かないかなあと、リビングの部屋をぐるっと見回してるわけだ。
今日はあと1つぐらい、ネタが欲しいところなんだけどなあ。しゃあない、疲れてるんだ、一旦寝よう。
腰かけていたソファをボフボフと叩き横になり、クッションを引き寄せて頭をのせた。
気づけばヒラが目の前に居るが別に気にせず目を閉じる。
「キヨー、今日の夕食何ー?」
おっと童帝王さすが空気読めねえ。俺、寝ようとしてただろ今。
「コンビニでも行っとけ」
「えー」
心底がっかりしたようにその場に座りこんだヒラは、「キヨ何か作れないの〜?」と駄々をこねる。
ヒラはいつも人使いは荒いわ言葉も荒いわ態度も荒いのにこういう時ばっかあざとぶってくる。
いつもならフジあたりを使ってるのにどうして今に限って俺なんだ。
諦めたのか、「しょうがないなあ」と無駄に一息ついてヒラが部屋を出ようと立ち上がった。
ふいに、ガチャ、と部屋のドアが開けられフジが入って来た。一瞬あたりを見回した後、
「そろそろお腹空かないー?」
とこいつまで言い出す。仲良しめ。
「もうお前らで何か作ればいいだろ。」
本当に面倒なのでクッションに顔を埋めた。
「えーでもなあ、料理まともに作ったの多段パンケーキ以来ないよね、フジ。」
「あれもそんなにまともじゃないけどね。」
「それもそうか。ははは。」
クッションの隙間から遠目に二人を見るが完全に俺を無視している。眠い俺を無視して大声で駄弁っている。
ちょつと苛つく。
「あ、良いこと思い付いたよ!」
「ん、何?」
ヒラが珍しく良い案を出せたらしくフジに嬉しそうに耳打ちでその内容を伝えている。
また昆虫採集レベルだろうなあ。と思い、少しも期待せず今度こそ意識を手放そうときつく目を閉じた。
明日も色々やることがあるな、なんて考えながら。
しかし間もなく二人に肩を揺らされた。自然にけわしい顔になりながらも既に重くなったまぶたを持ち上げると、二人が顔をやけに近づけてきている。
なんだ、と一瞬の戸惑いを見せた瞬間。
『キヨ、料理しよう!』
と満面の笑みで叫んできた。
「ふあ?」
思わず府抜けた声が出た。