ヒジキ小説


□ヒジキ→キヒジ
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「お前らでやればいいって、俺さっき言ったよね。」
「いや、撮影したいからさ。」
「あ、うん。まあそうだけど。」
「最俺会議で出てたじゃん、料理動画の案。」
「あれケーキだったよね。」
「じゃあ別企画として。ね。」

何を言ってももう無駄だということが今の会話で証明された。
料理の動画を撮るらしく早速二人とも顔になんか(マスク、グラサン)着けてる。

「で?何作るの?」
「え、そーだなあ。何がいいかなあ。」

考えてないのかよ。

「パスタとかどう、わりと良い感じのレベルじゃない?」
「お、そうだね。それいこう。」
「何のパスタだよ。」
「まあそれはいいから」

もう駄目だ、何言っても通じない。俺、今回ボケれない。

「じゃじゃーん。パスタ、買ってきました〜。」
「偉いぞヒラ!」

なんでこいつらこんなテンション高いんだろう。
今何時?ああまだ7時か。

「他は?」
「まずはオリーブオイル!」
「パスタといえば、オリーブオイルだよね。」
「カッチ(動画に使わない部分、素の会話)入れていい?」
「ん、何?」
「冒頭 先やろうよ」
「あ、いーよいーよ。」

もう料理作り始めようとしてる二人にストップをかけた。
作り始めたら冒頭に使えるネタが狭くなるだけ。最俺の実写は出オチスタイルなんだからちゃんと考えないといけない。

「フジよろしく」
「なんで俺!?」
「まあいいじゃん」

サングラス越しにフジの嫌そうな目がよく見える。
いつも冒頭を考えてるのは大体フジなのであって、そこまで嫌そうにする必要は無いと思う。
フジはじゃあ、とヒラの持っているオリーブオイルを指さした。

「これぶちまけよ、その瞬間一秒でいいよ。」
「おーけー。」

何がおーけーなんだろうなあ。

「あっ。」

がしゃーん

「…」
「あ、ごめ。」
「カメラ回してた?」
「一応。」
「ならいいか、片付けよ。」
「ごめんごめん、ふふ。」
「なんで笑ってんだ」

床に目をやると一瞬苔が生えているように見えたほど薄く緑色に染まっていた。
動画的にOKだとしてもキッチン的には完全AUTO状態である。

「うーわ、ヌルッとしてやがる。」
「二人とも、滑らないようにねー。ってわわわ」
「うあっ!?」

べちゃっ。

「てめー言ってるそばから滑ってんじゃねーよ!」
「ごめんて、あ、キヨそこ危ない。」
「え?」

ぬるんっ。
滑った。注意してるそばから滑った。なんだこれ最高に不毛だ。

反射的にヒラの服の端をつかんだ。
もちろんヒラは道連れになるが あろうことかヒラがフジのズボンを引っ張った。
倒れながら一瞬フジの「このやろっ」という小さい声が聞こえた気がする。

結果的に三人とも見事にドミノ倒しになり、ごちん、と仲良く頭を打ったのだった。
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