超高校級のわんこが通ります

□わんこと不二咲さん
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「あ、田中くん…!」
「む…?」

昼休みに田中とポチが中庭で遊んでいると、不意に田中を呼ぶ声が聞こえてきた。
二人がその声の方を振り返ると、にこやかに可愛らしい笑みを浮かべて手を振る、一人の女子生徒が立っていた。

「無垢なる手を持つ者か…。このような魔力が集いし聖園に一人で訪れるとは…よほど命が惜しくないらしい…」
「えっと…」
「わんっ!(ご主人は、こんな所で何してるんだって言いたいんだぞ!)」

田中の言葉の解釈に迷っている女子生徒に、通じるはずもないのだけれど、ポチが田中の言わんとしている言葉を鳴いて伝えると、彼女は表情をパッと明るくした。

「あ、えっとね、ボクは気分転換に外の空気を吸おうかなって思って…。そうしたら、中庭に田中くんとキミの姿が見えたからさ…」

そう言って彼女は膝を折って座り込み、ポチと目線を合わせて微笑んだ。

「噂には聞いた事があったけど、会うのは初めましてだよね?田中くんの隣のクラスの不二咲千尋です。よろしくねぇ」

にこにこと穏やかな笑顔の不二咲に、出会って間もないポチの好感度は一気に上昇した。

こいつ、おれの言葉が分かるみたいだし、優しそうだし、なんか好きだ!

実際にはたまたま分かっただけなのだが、ポチからしてみれば、先日の日向のように、不二咲もまた自分の言葉を理解してくれた人間と取れたらしい。
嬉しそうに尻尾を振って近づくポチに手を伸ばそうとした不二咲は、ハッとした顔をすると、田中の方を窺い見た。
その視線だけで不二咲の言いたい事を汲み取った田中は、フッと小さく笑いを零した。

「ポチは俺様の使い魔の中でも睦まやかな魔犬だ。貴様のような者なら、ポチはその牙を見せることはないだろう…。しかし、そうは言ってもポチも魔獣だ。以前にも言ったが、その牙を見くびらないことをゆめゆめ忘れるなよ…」
「うん…!びっくりさせないように、優しく触るねぇ」

田中の許可を得た不二咲が嬉しそうにポチの方へ手を差し出すと、その不二咲の手にポチの方から飛びついた。

「わっ!…ふっ、ふふふっ…くすぐったいよぉ」

不二咲の手に自身の頭を擦り付けて甘えるポチのふかふかの毛がくすぐったくて、不二咲は我慢できないというように笑い声を上げる。
不二咲の反応を知ってか知らずか、ポチはその行動をやめない。
楽しそうにはしゃぐ二人に、田中は口元を緩めるのだった。


しばらく戯れる二人を見ていた田中だが、見ているだけでは暇なので、破壊神暗黒四天王を田中キングダムから召喚し、自身は四天王達と戯れ始めた。

「あ、ハムスターさん…!」

四天王の存在に気づいた不二咲が、ポチを撫でる手を一旦止めて田中の方を振り返ると、ポチもつられるようにそちらを見た。

「わんっ!(あ、センパイ…!)」

田中の手のひらの上で気持ち良さそうに寛ぐ四天王の姿を確認すると、ポチはするりと不二咲の手から抜け出して、田中の方へと走り寄った。

「わんわんっ!(センパイ、こんにちは!センパイもご主人に遊んでもらってたんですね!)」

ポチが四天王に話しかけると、四天王が一角であるマガGがとろんとした顔で、ポチに退がれというように、小さな手ををさっさっと振った。
ポチにとって、破壊神暗黒四天王は同じ田中の部屋で暮らす、謂わばルームメイトだが、新人のポチに色々と教えてくれるセンパイでもあるのだ。
ちなみに、田中語の解釈の仕方を教えてくれたのも彼らだ。
そんなセンパイに退がれと言われたら仕方がない。
ポチは大人しく不二咲の元へと戻っていった。
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