ぐるぐる その1
□恋せよ文学少女
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「ねー、マホ。これからクレープ食べに行かない?サクラも来るけど」
『ごめんいの、今日私用事あるんだ〜』
「残念。じゃあまた今度ね」
『うん、また明日』
綱手女学院高等部二年生、マホ。
高校から編入して、サクラといのと仲良くなり、何でもない毎日をのほほんと過ごしている。
二人は幼稚園の時からの幼馴染だそうで、よくケンカもしているが、いざというときはお互いを大切にする、すごく憧れる仲だ。
そんなことより、今日は大事な日だ。
なんたって今日は私のいつも行っている図書館に、好きな作家の新作が入荷するからだ。
とは言っても、マイナーな作家さんだ。
放課後に行っても残っているだろう。
そう思って学校をサボらずに終わってから行くことにした。
@木ノ葉図書館
一冊だけ残ってた。ラッキー!
そう思って手を伸ばした瞬間、
「『あ……』」
あの、マンガでよくある、男子と同じ本を取ろうとして触れ合うやつ。今なってる。
その状況は、私が思っていたものとは程遠く…。
『(うっそー…めっちゃ怖そうな人とやっちゃったよ…あきらめるか…)
すみませんでした。どうぞ』
相手はこの図書館の近所にある木の葉学園という男子校の生徒。あそこは不良が多くて有名なところだ。なるべく穏便にことを済ませたい。
「いや、いいよ」
『い、いいんです!私、読むのすごく遅いし…』
「んー…じゃあ、俺は明後日に読み終えて返すから、そのタイミングでアンタが借りる。それはどうだ?」
『あ…じゃあそうします…』
「交渉成立な。しかし、油女シノなんてマイナーな作家好きなやついると思わなかったぜ」
はは、と笑う彼の姿は、初めてみた険しい表情とは全く違い、優しいものだった。
彼の言葉に私も思わず笑みがこぼれる。
『ふふ。私もそう思いました』
「アンタ、よくこの図書館いるだろ」
『え、どうして…』
「あ、いや、友達がその学校通ってるから、目に入ったっつうか…」
綱女に知り合いがいるってことは、悪い人じゃないのかな…。
『今までの、油女先生の作品も読みましたか?』
「ああ、二部作のあの話が好きだ」
『私も!蜘蛛使いの主人公が変わった子で面白いよね!』
「フッ……アンタ、面白いな」
『あ…///すみません。このお話できる友達いないから…あの、明後日よろしくお願いします、では…』
「あ…」
恥ずかしい。初対面の異性にあんなにグイグイ行っちゃうなんて。
絶対引いたよね…。
でも、あんなに気の合う人、初めて出会った。
約束は明後日か…。