ぐるぐる その1
□愛に変わる瞬間
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カチャ…
静かに玄関のドアを開け、部屋に入る。
いつも、誰もいない。
ここは、私が今付き合っている彼の一人暮らしの部屋。
彼―奈良シカマルは、忍界大戦を終えて今やこの里には必要不可欠な人物となっている。
彼との交際は5年前から。
同期や周りに知られると任務に支障が出るからと内密にしていた。
もう、2人で任務に出る事なんてないから、みんなに言ってもいいのに、彼は決して仲間に打ち明けようとはしない。
なぜだか私は知っている。
「ただいま」
『あ…おかえりなさい』
「任務終わりか」
『うん…』
「…俺はこれから一休みしたらまた火影邸へ戻る」
『そう、なんだ…』
そう言いながら私の前を通ると、ふんわりと鼻をかすめる甘い香り。
それは彼がいままで女性といたということを証明するものだった。
これでもう何度目だろう…。
いや、何十回とある。
彼は参謀という立場もあって、お見合いの話が何度も来ていた。
始めのうちは、付き合いだからといって参加はしていたもののすぐに帰宅していた。
けれど、ここ最近は日付が変わるまで出かけていることが多いし、何より本人が望んで行っているんじゃないかってくらい頻度が増えた。
きっと、シカマルの隣にいるべき人は、私みたいなただの上忍のくノ一じゃないんだ。