Novel

□伝えたい
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菅井side


「最近友香、元気なくない?」

「え、そんなことないよ」

放課後、茜に英語を教えている時、急に尋ねられた。

すごく心配そうな顔で、
私の目をまっすぐと見つめて。

「本当に?」

「うんっ全然平気だよ」

茜の問いかけに明るく返す。

私の返答に安心しきったようで、
にっこりと綺麗な顔で茜は微笑んだ。

「そっか。何かあったらちゃんと頼ってね。相談のるから」

茜の優しさが嬉しくて、
私は素直に頷いた。

私の頷きに微笑んで、
再びノートに視線を戻した。

茜の綺麗な微笑みが、
私の鼓動を激しくさせる。

いつからだろう。

いつから茜のことを、
こんなにも好きになってしまったんだろう。

周りに鋭くて、
リーダー的な素質が私よりも強くて、
女子力が高くて、
いつだって気合いで乗り切っちゃうような茜を。

いつからか好きになっていた。


実際、

最近、茜が部活の後輩に告白されたという噂を聞いて、落ち込んでいた。

茜がフったことも知っているに、告白されている光景を想像するだけでも、胸が苦しくて涙が溢れた。

勘の鋭い茜は、やはり気の沈んでいる私に気づいて、気にかけてくれた。

でも、自分のことに関しては鈍感な茜が私の想いに気づくはずがなくて。

気づいてほしいけど、気づいてほしくない。

伝えても困らせるだけだから。

勉強する茜の横顔を見て、
ドキドキするのに胸が締め付けられた。

「よしっ!そろそろ帰ろっか!
ゆうかに聞きたいことも聞けたし。」

「ん??聞きたいこと?」

「本当はね、英語を教えてほしかったわけじゃないんだよね。
なんか友香元気なさそうに見えて、心配だったから。
委員長だし、クラスまとめなきゃだし。
いろんなこと抱え込んでるんじゃないかって、思ったから。」

でも、何かあったら絶対相談してね。
そういって優しく話す茜。

茜の顔を直視できなくて俯く。

胸が急に熱くなる。

溢れ出しそうな想いを必死で堪える。

茜の思いと私の想いが交わるはずなんてない。

そう思っていたはずなのに、



「でもさ、」


「なんでも相談に乗るって言ったけど、」


「恋愛相談だけは、

聞きたくないから」



そう言った茜の顔は、
さっきとはまるで違ってて、

悲しげに、貼り付けたような微笑みだった。



期待してもいいのかな。

そんな顔されたら、
期待しちゃうよ。




「茜。私、茜のこと、、、




私の気持ち、

伝えてもいいかな。



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