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□可愛い愛猫になるまで。 @
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志田side
「・・・・・・」
「・・・・・・」
やばい。
気まずい。
たぶん、人生の中でこんなに気まずい
思いをしたの初めてかも。
ベッドにもたれて座る私の向かいに、
同じく座っている猫。
私とその猫の間にある小さな机だけが、私たちを隔てている。
このちょっとした距離だけが、
今の状況の唯一の救い。
おびえた様子で私の部屋を見回して、私とチラッと目が合うと、すぐに逸らして、不安そうに唇を噛む。
なんで猫に緊張してんだろう、、、
動物が人間のように見えるこの不思議な能力に嫌気がさして、ため息をついた。
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話は昨日に遡る。
私の不思議な能力を唯一知っているのは、守屋だけだった。
もちろん、私も同じく守屋の能力を知っているのは私だけ。
お互いにその事を知ったのは、随分最近の話だけど。
そんな守屋から、急にお願いがあると言われた。
どんなのか聞いてみたけど、
私の家に来てから話すとだけ言われて、
守屋も真剣な顔してたし、
拒否することもできずついて行ってしまった。
守屋の部屋に上がると、
もう何度か会ったことのある猫の友香と、
全く知らない猫が守屋のベッドで寝ていた。
「久しぶり、ゆっかー」
「あっ、まなかっ!」
私は友香のことをあだ名でゆっかーと呼んでいる。
声をかけると、ゆっかーはものすごく嬉しそうに笑った。
「じゃぁっ、まなかの家にいくの!?」
はしゃいでるゆっかー。
、、まって、何の話しての??、、
「ってことなんだけど、
愛佳の家で、この子愛佳の家で預かってもらえない?」
「いやいや、まって、話見えないんだけど。」
マジで、何言ってんの、、、
私の言葉に、
そっか、説明してなかったっけ、
と呟く。
いやいや、後から説明するって言ったの守屋じゃん。
「 実は、友香の友達なんだけど、
なんか怪我してて、家に連れてきちゃったんだ。
すごく可愛いから、
本当は飼いたいんだけど、
うちには友香いるし、親に無理って言われちゃって。
だから、お願い!
2、3日でもいいから、あの子を預かっててほしい!」
守屋が神頼みしてるみたいに言ってくる。
確かに、両親出張で1週間は確実にいないけどさ。
「ぅー大丈夫だとは思うんだけどさ。
ただ、、、」
「ただ?」
「性格悪そうじゃない?
じゃぁ、
私がゆっかーひきとって、
あの子を守屋が引き取るのは?」
「却下」
即答かよ。
確かに、布団を被って寝ている猫の顔を見てみると、すごく可愛い。
目は閉じられているが、
たぶん相当の美人だと思う。
ただ、その見た目故に、
性格は悪いんじゃないか。
いくら猫とはいえ、すべての猫が甘えん坊で可愛らしい性格を持っているわけではないし。
キツイ性格だったら、
どうしよう、、、、
「べりかすごくいいこだよ。」
すこしはなすのが
にがてみたいだけどね、
とゆっかーが教えてくれた。
べりかって名前なんだ。
「はぁ、わかった。
3日だけ。3日だけなら預かるよ。」
それから、
私は、『べりか』という猫を、
預かることになった。