ー短編ー

□君の隣で。
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景勝「あれ?…名無しさんさんだ。」

城の廊下を歩いていると庭にしゃがみこんでいる彼女を見つけた。

…どうしたんだろう?

景勝「…行ってみよう。」



















景勝「…ねぇ。どうしたの?…具合、悪い…?」

彼女の肩に手を軽く置くとびっくりした様に振り向く彼女。

景勝「あ…驚かせてごめん。…名無しさんさんの姿が見えたから…で、どうしたの?大丈夫?」

僕がそう聞くと首を縦に振る彼女。

景勝「そっか。……あれ?なんだろう…なんか、違和感?」

彼女をじっと見るといつもと何か違う。何かがないような…

景勝「あ。…かんざし。どうしたの?」

そうだ。いつも彼女がつけているかんざしが無い。

景勝「……なくした?」

…こくん。

力無く頷く彼女。庭でしゃがみこんでいたのは具合が悪かったんじゃなくてかんざしを探していた、から。

景勝「僕も手伝うよ。…なくしたのはここ?」

こくん。

景勝「…わかった。」

こうして僕と彼女のかんざし探しが始まった。












…あった。

暫く経った頃、花の間に埋もれる様にして隠れていたかんざしを見つけた。

土を払い、持っていた布でかんざしを拭くと彼女に渡す。

景勝「…はい。これ、であってる?」

名無しさん「!!」

僕から渡されたかんざしを胸に抱き、嬉しそうに微笑む彼女。

…見つかって良かった。

景勝「それ…父上からの送り物、でしょ?」

こくん。

景勝「流石は父上…名無しさんさんに良く似合ってる。」

かんざしを挿した名無しさんの髪にそっと手を添える。
……父上からの、送り物。
なんだろう。…胸がざわざわする。

景勝「…ねぇ。…今度、僕が名無しさんさんにかんざしを送ったら受け取ってくれる?」

彼女は首を傾げて居たが、微笑み頷いてくれた。

景勝「…ありがとう。」

それじゃ。と、彼女に背を向け歩き出そうとすると彼女が僕の手を軽く引いた。

名無しさん「…あ、りがとう。」

景勝「うん。僕こそ。」

彼女は少しづつ話せる様になってきた。
多分…一番は父上のお陰だろうけど……僕だって…彼女の為に何かできる事をしたい。

名無しさん「…?」

この優しい彼女を僕は守りたい。
…ううん。守るんだ。
父上や皆には劣るかもしれない…けど、僕は僕なりのやり方で守って見せるから…

…笑っていて。
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