夢小説集@

□宝石の国
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冬の守り人

一度だけ、眠くならないので少し学校を歩き回ってから寝ようとした冬がある。静かで、でも時々風と流氷のごうごうという音が鳴り響く学校は少し異様だった。図書館、会議室、医務室。自室は最後に行こうとレッドが作ったひらひらのパジャマの裾を摺ながら、校内を徘徊していると聞き慣れない声が私を呼ぶ。

「おい、そこで何をしている」

振り向けば白い制服に身を包んだ宝石が佇んでいた。
彼は確か冬を担当していた…

「アンターク?」
「ミツバ、冬眠はどうした。」
「あは…なんか眠れなくて。アンタークは?これから流氷割りに行くの?」
「そうだ。」

今年も頑張ってね、と手をひらひら振る。アンタークは私の横をゆっくりと通り抜ける時に後ろを向きながら、手を上げ去っていった。私は冬にしか会えないアンタークとお喋りできたことが嬉しくて、鼻歌を歌いながら自室へは行かずに冬眠室へ真っ直ぐに向かった。

「起きていたのか」

アンタークとは違う低い声に身を引っ張られるぐらいの勢いで振り向くとそこには先生が立っていた。私はあまりの嬉しさに、思わず先生の元へ駆けていく。

「ごめんなさい、眠くなくって…でも!もうすぐ寝ます」
「そうか」

先生の大きな手が私の頭を優しく撫でた。皆が大好きな手を今だけ独り占めしている気分になって、少しだけ嬉しくなった。

「おやすみ、よい夢を。」
「おやすみなさい、先生……あ!」
「どうした、ミツバ」
「……後で、アンタークに。「いつもありがとう」って、伝えておいてもらえませんか」
「……わかった、伝えておこう。」

ありがとうございます、と言って私は冬眠室へ足を踏み入れる。目の前ではボルツが寝ぼけて徘徊しているのが見えた。

「……ボルツ、こっちだよ〜……」

ボルツのパジャマの布を少し引っ張り、眠れる場所に連れていく。座ってから、下に布を引っ張ればゆっくりとクッションに身を沈めた。これでみんなが割れる心配もない。

それじゃあ、アンターク、先生、おやすみなさい。

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