夢小説集@

□宝石の国
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昏睡する蓮

日差しが強くなる夏、強い紫外線を浴び続けると色が抜けてしまう私は外に出ることが出来ず、学校で仲間達の手伝いをするようになる時期と言える。

「ミツバ。今日も手伝い?」
「あ、うん。ベニト達は見回りだったよね」
「そうだよ。それじゃ行ってくるね!」
「行ってらっしゃい、気をつけて。」

夏に入って十日目、今日の仕事は医務室でルチルの手伝い。今日はまだ割れた子がいないため、棚の整理と器具の手入れをしてほしいと指示され、ちょうど器具の手入れに取り掛かったところだ。ルチルと言えば、またパパラチアのパズルに徹していた。最近じゃパパラチアが目覚める事はとても稀な事で、話せたら運が良いと言える。私が言っているだけだけど。私はいつもタイミングを逃してしまうためパパラチアとは彼が稼働していた時間に一言二言交わしたぐらいだと認識している。

(「ミツバ、しばらく見ないうちに強くなったらしいな。ルチルから聞いたよ」)
(「! ありがとう。夏場は出られないけど、春と秋で沢山働いてるからね!」)
(「はは、あまり張り切りすぎず頑張れよ。」)

確か、最後はこんな会話だった気が。
それからはルチルにはいつも「パパラチアが起きたら話したい」と言って、ルチルも「パパラチアもきっとあなたと話したがるでしょうね」と笑っていた。本当はルチルを困らせていたのかもしれないけれど、一生懸命パパラチアを起こそうと頑張る姿が好きだった。気の利いた言葉を掛けたくても掛けられない、そんな私自身に嫌気が差すぐらい。

「…はぁ、ダメですね。」
「やっぱり起きない?」
「はい。やはり彼により近い素材を探さねば…」
「そっかぁ。」

眠ったまま動かないパパラチアを眺め、ルチルは肩を落とした。以前に慰めのつもりでルチルのせいじゃないよ、と声を掛けた時に聞いた悲鳴のような叫びを聞いてから、この時のルチルには声が掛けられない。私に出来る事といえば、傍にいる事ぐらいだ。

…そうして時間が経つと、割れた子が担ぎ込まれてくる。今日も激戦だったようだが、さらわれた子は誰一人居ない。私とルチルは顔を見合わせ、大急ぎで処置の準備に取り掛かった。

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