夢小説集@

□other
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触れて


梓紗が今日は追試だから早く帰ってていいよ、と言って来たのは今朝のことだった。
放課後、「追試、がんばって」と肩を叩けば梓紗は苦虫を噛み潰したような顔で「うん」と答える。

とりあえず、次回からはテスト対策勉強会でもしようか。
そんなことを考えていたら、満が「帰るか」と声をかけて来た。

頷いて、満の後をついていく。

ついていくだけなのも暇なので「次はテスト対策勉強会でもしようよ」と提案した。

まあどうせ参加しないって一言で終わるんだろうけど…

「そうだな」
…え?

「珍しいね、満が良いって言うの」

「まあ、たまには」
「梓紗のためだしね」

満はそれ以上は何も言わなかった。

…ちょっとだけ、モヤモヤしてしまう自分に嫌気が差す。

なんで私に振り向いてくれないのかなぁ。
確かに私は満に”翔”を投影してるところがある。
でも満はそんなこと気づいていないだろうし。
なおさら私の気持ちにも気づいていないだろうけど。


「…満」
本当は触れてほしいけれど。

「隣、歩いていい?」
いまは隣で我慢しなきゃ。

「構わないけど」
…そういうところがずるいんだよ。

「ありがとう」
隣に立てるだけで心臓はもうすでに破裂寸前で。

「いや、別に」
どうしよう、抑えられそうにない。

次の瞬間、私が目にしたのは満の驚いた顔だった。

つい、手を握ってしまった。

「ご、ごめ」
「…いいよ」
「え、」

恥ずかしいけど、と続ける満だが私の手を振りほどこうとはせず、私も帰るまで満の手を離さなかった。

…そんな優しいところが、残酷かも。


▼タイトルは「CP向け140字・SSお題」様から

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