夢部屋
□*アネモネ。2
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「あの、名無しさんさん?」
「今日もお勉強で遅くなったのですか?」
彼女はにこにことこちらの気持ちも知らずに話しかけてくる。
「ええ、まあ……」
この状況で無視することも出来ず私は適当に返事をする。
「名無しさんさんは凄いですよね!座学も実技もくノ一のトップですもの。」
「もう上級生並だとか!先生達から聞きましたよ!」
彼女はきらきらと輝いた目で私を見てくる。
(努力してるんだもの。貴女はしらないでしょうけど)
彼女は、女の私からみても白くて女の子らしい綺麗な肌をしている。
私はこの前の実習でつけてしまった傷を隠すように身体を丸めてしまった。
「潮江くんや、食満くんからも聞きました。味方にすると心強いが、敵にすると厄介だ…って。」
「皆さんにくノ一として認められてて羨ましいです」
そう言われとき私の中で黒い何かがうごめいた。
褒められていることよりも、彼女が私たちの中に入ってきていることを認識した瞬間、苛立ってしまった。
(彼女が悪いわけじゃない…)
私は愛する彼をとられたことで、嫉妬しているにすぎないのだ。