夢部屋
□*嫉妬
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「ごめんね、困るよねこんな泣いてばっかで」
笑おうと思っても上手くいかない。
「名無しさんッ!」
突然ハチに呼ばれたと思えば両肩を抑えられる。こんな至近距離で真剣なような眼差しでみられたら動けなくなる。
「それってさ、…名無しさんは俺のこと好きってこと?」
ああ、好きなのか。
「…そっか。私、ハチのことが好きなのね」
名無しさんは理解したかのように笑顔で頷いた。
なんだかとてもしっくりきて、今までのモヤモヤが綺麗に落ちていく。
笑顔で好きだと言われたハチは、真正面で顔を見れず肩を震わせながら俯く。
今度は名無しさんが心配になり、オロオロし出す。
「…ハチ?」
ガバッと顔をあげる八左ヱ門。
「…俺もずっと好きだった。」
嬉しくて、嬉しくて。また涙が出てくる。
ハチは優しく指で涙を拭ってくれて。
私の中の″嫉妬″という感情も涙と一緒に流れでてくれたようだった。
「名無しさんに好かれるなんて、今日は最高な日だな」
そう言って優しく抱きしめてくれた。
***
名無しさんが去って行った食堂前。
「あれ?…もしかして名無しさん、今の話聞いてたんじゃない?」
とニヤリと笑う勘右衛門。
「これはもしかして、人生最大かもしれないモテ期がきた八左ヱ門に妬いちゃったのかもな」
三郎も続けてからかう。
「でもハチは他の子を選んだのか〜。じゃ俺が名無しさんのこと誘うかな」
「待って!選んでないしッ!俺が誘うから!!」
『『はいはい、早くいってらっしゃい』』
メニューを見ながら皆答える。
応援してくれているのか、そうじゃないのか。複雑に思いながらハチは走って行った。
皆が顔を見合わせて笑を零していたのを知らずに。