夢部屋
□*むかしむかし
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「ねぇ、勘右衛門。名無しさんはこれが似合うと思わない?」
「うん。可愛いね」
兵助が私に似合う色を選んでくれている。勘ちゃんは適当に相槌してるようだ。
「ねぇ、私はこっちが好きなんだけど…」
「うーん…そっちも似合うんだけど、たまにはこっちも良くない?」
「…名無しさんの選んだ方が、名無しさんっぽい」
2対1で決まった。
選んでいたのは髪紐。
これから女装した兵助と勘ちゃんと町へ行くのだ。学園を出る前から女子会みたい。
「やっぱり名無しさんはこの色が似合うね。可愛い。」
勘ちゃんはそう言うと私の腕に絡みつきくっついてきた。
見た目は女同士だといっても、勘ちゃんは男だしやっぱりなんか恥ずかしい。
ほんとは兵助が選んでくれた色も好きなんだけど、勘ちゃんいるときはいっつもこの色を選んでしまう。
(勘ちゃんは覚えているのかな…)
むかし、私たちがまだ学園に入る前のこと。
『名無しさんちゃん、名無しさんちゃんにこれあげる』
『わー綺麗な石。こんな綺麗な石貰っていいの?』
『名無しさんちゃんにはこの色身につけて欲しいの。あとね、この髪紐もね、貰ったからあげる』
『あ、おんなじいろ』
『名無しさんちゃんには、ぼくの好きな色を付けててほしいんだ』
『うん、わかった。ありがとう、勘ちゃん大好き』
『ぼくも大好きだよ』
むかしむかしのお話。
「ねぇ、名無しさん。覚えてる?小さいとき好きな色の話をした時のこと…」
耳元で囁いた勘ちゃんの言葉に顔が一気に赤くなった。
むかし話にはまだ続きがあるみたい。