夢部屋
□*この先
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先輩達が卒業してから、いく日がたっただろう。
前よりは落ち着いたんじゃないかな、この学園も。
個性が強かったもんね、あの先輩達は…。
読み終えた本を閉じ、ため息を一つつく。
私の部屋には七松先輩からもらったものがたくさんある。
『綺麗だろ、この花。名無しさんにあげる』
そして押花にしてしおりとして使っている。
『名無しさんに似合うと思ったんだ、つけてくれ』
そう言われて貰った簪や櫛は今でも大事に使わせてもらっている。
その他にも卒業のときに女装用の小袖をお下がりしてもらったり、読み終えた本、交換した苦無。
あの人との思い出がたくさん溢れている。
でも。
きっといつかはこの関係も終わってしまうのかしら。
こんなにあの人に包まれているのにふとした瞬間、不安を感じてしまう。
私はまだ学園。あの人は卒業して、忍者。
この縛られた空間から出て行ってしまった彼は、新しい世界を色々みるだろう。
今まで知らなかった世界を知るのだろう。
そのとき、私のことなんて忘れてしまうのではないか。
いつもそんな不安がどこからとなく現れてくる。
きっとあなたがいなくて寂しいから。