夢部屋
□*Web拍手
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[立花仙蔵]
こんな可愛らしい生き物が存在するなんて、思いもよらなかった。
ましてや、あいつの妹だなんで信じ難い。
「今日も変わらず愛らしいな、お前は。」
用具委員会を手伝っている四年生の彼女にそう言うと、照れながらも笑って否定した。
「立花先輩は今日も素敵ですね」
「そうか、お前がそう思うならよかった。」
先輩たちはお似合いです、と用具委員会の1年生が囃し立てるものだから彼女は顔を赤らめた。
たまにはいい事を言うじゃないか、お前らも。
仙蔵からしてみては何をしても可愛らしく、兄に似なくて良かったなと心底思っていた。
「お前ももう四年生にもなったんだ。そろそろ、潮江の名を捨てて私のところに来ないか?」
おおーっと周りからの声が聞こえたが、そんな雰囲気を留三郎がぶち壊した。
「ッンなことより、壁直すの手伝え!!い組で責任とれッ!」
留三郎が用具を投げてきたがするりとかわし、壊した文次郎の責任なんてとるかと彼女の手を引きながらその場を立ち去った。
「卒業まで待つ気はない。そろそろ返事をくれないか」
断らせるつもりもないが、と付け加える。
彼女は繋がられた手を握り返し、コクリと頷いた。