夢部屋
□*苦難の日々
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門の前にて。
「留三郎、伊作、気を付けて」
「ああ、行ってくる。」
「行ってきます」
課題で外出する六は組を見送る名無しさん。
名無しさんは留三郎と双子である。忍たまとして兄の留三郎と同じく入学してここまで一緒に進級してきた。ある秘密を持ちながら。
二人の姿が見えなくなるまで見守っていた。
「…行っちゃった」
ふぅ、と一つため息を吐く。
「そんなに心配か?」
あいつらなら大丈夫だろ、と文次郎が門から出てきて名無しさんの隣に立つ。
「うん、そうだよね。なんだか留三郎たちがいないと思うと寂しくて」
寂しそうに笑う名無しさん。
兄とは顔は似ているが、髪を伸ばし身体付きも華奢な方だ。
勝負好きの兄とは違い落ち着きがある。後輩の面倒見がいいのは同じのようだった。
「まあ、俺がいるんだ。あいつらがいなくてもいいだろうが」
咳払いをし、照れたようで目線をそらす文次郎。
「そうだね。文次郎がいてくれたら安心だった」
クスッと笑う名無しさん。
「なぁ、今夜委員会もないから部屋に…」
最後まで言いかけたとき凄まじい殺気を感じた。
走ってきた留三郎の飛び蹴りを間一髪で避ける。
「…ッあぶね…だろぉ!バカタレェ!!」
「…うるせぇ!名無しさんの身の危険を感じたんだよ!黙って三禁守ってろよこのアホがぁ!!」
ぜェぜェと息切れの留三郎が捲し立てる。
「やかましいッ!さっさと行ってやられてこい!」
またいつもの取っ組み合いの喧嘩が始まったが、騒ぎに駆けつけた先生たちにすぐ抑えられた。
渋々、留三郎は待っている伊作のもとへ向かい、文次郎も仙蔵に引っ張られた。
それを見ていた名無しさんは今日も苦笑した。