夢部屋

□*冬支度
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「とめさぶろー!」

委員会活動中、下級生が釘を打っているのを見守っていると離れたところから名前を呼ばれて顔を上げた。

くノ一の長屋の屋根から呼んでいる姿を見つけた。どうやら名無しさんのようだった。

「どうしたー?」

留三郎が立ち上がり返事をする。

「ちょっとこっちきてー!直してほしいのがあるのー!」

留三郎に笑顔で手を振りながら叫ぶ。

「わかった!今行く」

くノ一に近づくのは気が引けるのだが、頼み事ならしょうがない。
ちょっと行ってくると下級生に声をかけると、気をつけてくださいねと心配された。

用具を持ってくノ一長屋に向かう。すると名無しさんが屋根から降りて手招きをする。

「ごめんね、部屋の方なの。あっちは危ないからこっちから行こう」

名無しさんに手を引かれ部屋に案内される。
正直ここを歩くのも嫌なのだが、手を繋いでいるこの状況はおいしい。
さすがくノ一め、色をかけてくるとはと自分を誤魔化す留三郎。

ひとり悶々と考えていると、ふいに名無しさんが振り向きどきりとした。

「寒いね」

「ああ」
そういえば彼女の手が冷たい。自分の手も外にいた為に冷えてはいるのだが。

「ここだよ。戸が動かなくなっちゃったの」

案内された場所には、年下であろうくノ一の子がいた。
どうやらこの子の部屋らしい。

「建付けが悪くなったんだろ。これならすぐ終わるな」

そういうとすぐ直しにかかった。

後ろでそれを見守る2人は留三郎の動きに関心している。

「流石、留三郎だね」
うんうんと隣で頷く女の子。

「これくらい簡単だ。ほら、直ったぞ」

戸がスムーズに開き、喜ぶ。

「ありがとうございました!食満先輩に名無しさん先輩!」

お辞儀する後輩に手を振りあとにする。その時また名無しさんに手を引かれながら歩いていた。
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