夢部屋

□*恋話
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「勘ちゃんッ!見つけた〜!やばかったよぉ。私もう死んじゃうよ〜」

「はいはい、よかったね。まずは離れて落ち着こうか」

委員会に集まっているところに乱入し、他のものには目もくれず勘右衛門の腰に縋る名無しさん。それを慣れたようにあやす勘右衛門にも、皆動じないくらい公認されていた。

「で、告白できたの?」

名無しさんにお茶を出してくれる1年生にお礼をいい、一口飲む。

「…ううん。できないよ。
でもね!私に好かれる人は羨ましいって言ってくれたの!優しいよね!」

あのときの表情がたまらないとか、あの仕草がすきとか1人語り出すのを聞き流す委員長たち。

「そっか。話せてよかったね」
ニコニコしながら名無しさんの頭を撫でる。名無しさんも微笑むと一通り落ち着いたようで、お邪魔しましたと帰っていった。

ふぅ、とお茶を啜るとまたバタバタと誰かが駆け込んできた。
誰とは言わずとも検討はついていたのだが。

「勘右衛門〜ッ!!なんで、名無しさんに好きな人いるって教えてくれなかったんだよッ!
それにさぁ、名無しさんに好きって言われたいって言ったのに全然気づいてくんないの!」

なんでだよ〜と今度は八左ヱ門が戸を開けた途端に一気に捲し立て、勘右衛門に縋り付く。

委員会なのに他の奴らがいてもお構い無し。

似たもの同士の2人にため息を一つ吐く。

「なぁ、勘右衛門。名無しさんの好きな人って誰なの?」

「言うわけないでしょ。知りたいなら自分で聞きなさい」

ピシッと断る勘右衛門に、先程の名無しさんへの態度と差があるなと見守る委員長たちは思う。


「そうだよな〜。相手が6年生だったらどうしよう…。

でもさっきの名無しさんも可愛かったなぁ」

落ち込んだかと思えばすぐデレる。

「八左ヱ門も早くしないと、名無しさんなんてすぐとられちゃうよ?」

意地悪そうに笑う勘右衛門に、八左ヱ門は慌てて部屋を出ていった。

きっと2人が幸せになるのももうすぐかな、と茶菓子をぱくりと頬張る。



数日後、顔を真っ赤にした名無しさんがとても嬉しそうに勘右衛門に抱きついて報告してくれた。


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