夢部屋
□*アネモネ。2
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あれからどのくらいたっただろう。
昼間の青空はもう黒く染まっていた。
「こへいた……」
愛しい人の名前を呼んでも、返事は返ってこないし気配すら感じない。
(こんな顔じゃ、誰にも会えないや)
夕飯も今日はいらないや。お風呂に入って、明日の準備もしなきゃ。
振られたばかりでまだ信じたくないのに、意外と頭は動くものだ。
「はぁ……。明日からどうしよう」
小平太には会えるのだろうか。
彼はどんな顔するだろう。
また話してくれるのかな。
みんなはいつも通りに接してくれるかな。
あ、バイトも行かなきゃ。
私は机に本を並べ直し、先にお風呂に行くことにした。
「早く上がって、これ読まなきゃ」
私にはやらなきゃいけないことがある。立派な忍者になるためにも。
小平太とみんなと卒業までここにいるためにも。
「…想うだけならいいよね?」
また泣きそうになるのをぐっと堪えて、私はお風呂場へ向かった。