夢部屋

□*はつでーと
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待ち合わせの時刻まであと少し。
竹谷は緊張を隠しながら門の前で待つ。

「あ、お待たせしました、竹谷先輩!」

可愛らしい小袖の名無しさんが出てきて声をかける。

「……ああ、はじめて見たが可愛らしいな!」

竹谷に笑顔で言われ頬を赤らめる名無しさん。

木の陰から勘右衛門が親指をぐっと立ててきたが、無視することにした。

(来るなって行ったのにあいつら…)
見守られていることに不満はあるが、なんせせっかくの名無しさんとのデートだ。失敗するわけにはいかない。

町まで談笑しながら、名無しさんと歩く。ちょこちょこあいつらは見えていたが、名無しさんには気付かれずに済んだ。


「あ、先輩!あそこの小間物屋さんに行ってみましょう」
名無しさんが指をさした店からは、買い物したであろう男女が店から出てきたところだった。女が嬉しそうに男の腕に寄り添っている。

「先輩?」首を傾げる名無しさん。

「お、おお!行ってみよう」

つい、先ほどの2人に自分たちを重ねてしまう。いつかああなれるのだろうか。

(……手、くらい繋ぎたいなぁ)
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