夢部屋
□*捕まえたい
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「あいつも寂しかったのだろう。少しはかまってやれ。」
夕食を食べ終え、部屋に向かっていると仙蔵にそう言われた。確かに長期にわたって会わなかったが、だからと言って構う義務もない。
そもそも、こんなことを考えることすらおかしいのだ。必要もない。
何せ、もう目の前に居るのだから。
「2人の布団敷いておいたよ」
「ありがとう、名無しさん。私は先に休むから、おやすみ」
そういうと早々と仙蔵は寝た。否、見捨てた。
静まり返る部屋。
「…おやすみ。」
文次郎も寝ることにした。自分の布団に入る。
だが、名無しさんは何もしてこない。それが怖い。
「……ったよ。」
「は?」
名無しさんの言葉が聞き取れず、つい聞き返してしまった。
「さみしかったよ、もんじ…」
名無しさんは涙を浮かべ、布団の横に座っている。いつもは遠慮なくやめろと言ってもくっついてくるが、どういうわけか今日は布団に入ってこない。
「どうした…?」
声をかけてもただ涙を堪えるだけで、こちらを見ている。
「名無しさん?」
いつもとは違う雰囲気の名無しさんに上半身を起こし、声をかける
「もんじ…、文次郎は、私といても全然楽しくなかった?やっぱりいない方がいい?」
そういうことか。先ほどの風呂場でのことを気にしているのか。
(まさか、こいつがこんなことを気にするなんて思ってもいなかった…)
今まで何してもへこたれず、諦めないこいつに安心しきっていたのかもしれない。
「…悪かった。ほら、もう寝るぞ、名無しさん。」