夢部屋

□*捕まえたい
4ページ/5ページ



「あいつも寂しかったのだろう。少しはかまってやれ。」
夕食を食べ終え、部屋に向かっていると仙蔵にそう言われた。確かに長期にわたって会わなかったが、だからと言って構う義務もない。
そもそも、こんなことを考えることすらおかしいのだ。必要もない。


何せ、もう目の前に居るのだから。


「2人の布団敷いておいたよ」

「ありがとう、名無しさん。私は先に休むから、おやすみ」
そういうと早々と仙蔵は寝た。否、見捨てた。

静まり返る部屋。

「…おやすみ。」
文次郎も寝ることにした。自分の布団に入る。

だが、名無しさんは何もしてこない。それが怖い。

「……ったよ。」
「は?」
名無しさんの言葉が聞き取れず、つい聞き返してしまった。

「さみしかったよ、もんじ…」

名無しさんは涙を浮かべ、布団の横に座っている。いつもは遠慮なくやめろと言ってもくっついてくるが、どういうわけか今日は布団に入ってこない。

「どうした…?」

声をかけてもただ涙を堪えるだけで、こちらを見ている。

「名無しさん?」
いつもとは違う雰囲気の名無しさんに上半身を起こし、声をかける

「もんじ…、文次郎は、私といても全然楽しくなかった?やっぱりいない方がいい?」

そういうことか。先ほどの風呂場でのことを気にしているのか。

(まさか、こいつがこんなことを気にするなんて思ってもいなかった…)
今まで何してもへこたれず、諦めないこいつに安心しきっていたのかもしれない。

「…悪かった。ほら、もう寝るぞ、名無しさん。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ