夢部屋
□*この先
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涙が一つ頬を伝う。
淋しくないようにと、置いて行ってくれたものがいくらあっても
やっぱりあなたに逢いたくて。
声が聞きたくて。
″また一緒に生活したい。子供のままでいたかった。″
こんなふうに思う私は忍者失格かしら。
「…七松先輩…」
そとはしとしとと雨が降ってきた。
私の呟きなどかき消されてしまう。
「名無しさん。
名無しさん。私だ。」
今逢いたいと願っていた人の声が聞こえた…気がした。
想いすぎて幻聴でも聞こえたのだろうか。だとしたらもう一度聞きたい。
「名無しさん、開けるぞ」
涙が溢れてくる。
なんという幻聴だろうか。私がほしいように聞こえてくる。
「な、七松先輩…」
戸に手を伸ばすと、外から開けられた。
「逢いに来たぞ、名無しさん」
あの頃と変わらない、あの頃のときと同じ笑顔で、会いたかったと私を抱きしめてくれた。
彼の首に手を回し、私も会いたかったですと伝えると優しく落ち着くまで撫でてくれた。
「なんだ、さみしかったのか?」
泣くのが落ち着いた頃、七松先輩は私を膝に座らせて脇腹を撫でていた。この手がくすぐったい。
「先輩に貰ったものがたくさんあるけど、どれも思い出があって…それを思い出してしまうんです。
でもそれは幸せな時間なんです。
思い出すだけでいつでも先輩の笑顔が見れるし」