それがあなたの夢ならば
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何だか急に胸が苦しくなると、私はそのまま泣き出してしまった。
「……星花ちゃん?」
フラン兄は心配そうだ。
また、心配をかけてしまったな……。
「ううん、なん、でもない……。なんでも、ないんだけ、ど……」
嗚咽混じりにそれだけ言うと、もう言葉が言えなくなってしまった。
フラン兄は、私をそっと抱きしめると優しく背中を摩った。
「大丈夫、大丈夫。お兄さんがいるからね」
小さな頃から、ずっとそうだった。
泣きたい時はこうやって、私の『お兄さん』は私のことを慰めてくれた。
ひとしきり泣くと、私はフラン兄から離れる。
彼は、安心したように微笑んでいた。
「……落ち着いた?」
「うん、ありがと」
私も微笑み返すと、フラン兄は言った。
とても真剣な顔をしている。
「会えなくなるって言ったことについてだけど」
フラン兄は少し言い辛そうに頭を掻いている。
そんな彼の言葉をじっと待つ私。
「実は、俺も言われたんだ。多分星花ちゃんの言っていた教師とおなじ奴に。もう、星花ちゃんとは関わるなってね」
ということは、さっきのは自分の身を守るためでもあったのか。
それなら、仕方の無い事だったのかもしれない。
そう思う私とは対照的に、フラン兄は申し訳なさそうにしていた。
「嫌だよね〜、あんな言葉の言いなりになるなんて俺らしくないというか。君の強さを見てやっと俺も考え直せた。さっきは酷いこと言って、傷つけて、ごめん。それと──」
一呼吸置くと、とびきりの笑顔でフラン兄は言った。
「──Merci du fond du coeur。俺の可愛くて大事な星花ちゃん」