それがあなたの夢ならば

□11
3ページ/5ページ

「あなたは……?」

私は今、見知らぬ少女によって地面に倒されそのまま私の体に少女が座り、重みで押さえつけられている状態だ。
私は、その重みに耐えながらも目の前の綺麗な顔を見ながら聞く。
すると、その顔を歪ませ彼女は言った。

「私はナターリヤ……。お前のことは知ってるぞ、ずっと前からなぁ!」

こ、殺される……!
まだ睨まれているだけで、直接刃物を突きつけられたり、首を締めつけられたりしているわけでは無いのに、殺気だけで死を覚悟した。

そのまま声を出せずにいると、彼女は再び口を開く。

「いいか、兄さんの側には私だけでいい。お前が入る隙なんてないんだからな!」

ところで、ナターリヤの言っている「兄さん」とは一体誰のことだろうか。
恐怖で出ない声をどうにか絞り出し、聞いた。

「あの、ナターリヤ。兄さんって……」
「兄さんは兄さんだよ。お前が恋人呼ばわりしている、イヴァン兄さん!」

恋人……。
その言葉になんとなく恥ずかしさを感じ、それと同時に顔が熱くなるのを感じた。
 
「なに顔赤くしてんだよ」
「いや、その……。恋人って……」
「だって、兄さんも言ってたぞ。この私がいるというのに、なんでこんな女なんか……」

ブツブツと何かを呟く彼女を見ていて、思い出した。
菊は!?

「ナ、ナターリヤ! 星花ちゃんをそれ以上いじめないで!」
「に、兄さん!?」

そこには、息を切らせた菊と、とてつもなく青ざめた顔をしたイヴァンがいた。
えっと、イヴァンはお兄さんなんだよ……ね?
何故あんなにも震えているのだろうか。

ようやくナターリヤが私の体から降りると、軽く咳き込みながら立ち上がった。
そして気がつくと、彼女はイヴァンにくっついていた。

「兄さん、結婚しましょう! こんな女放っておいて、私と一つになりましょう!」
「や、やっぱり無理……。こ、こないでぇぇえ!!」
「なぜいつも逃げるのですか、兄さん! 私はこんなにも兄さんのことを思っているのに!」

走って逃げて行くイヴァンにいつも彼はこんな苦労をしていたのかと、少し同情した。
そこで、私は気がついた。

「イヴァンがお兄さんなら、あなたも国なの?」

すると少し間があき、嫌そうに彼女は答えた。

「……そうだよ。だったら何だっていうの」
「いや、どこなのかなーって……」

すこし引き気味に聞いた。
だがナターリヤはふぅ、と息を吐くと仁王立ちして言った。

「私は兄さん……、ロシアの妹のベラルーシ。一応、姉さんもいる」

ベラルーシ? そんな国ありましたっけ。
まるで知識のない私には全く聞き覚えのない国名だった。

「そ、そーなんだ」

わからないことを隠して適当に返事をすると、ナターリヤはふんっと鼻を鳴らした。
きっと、ナターリヤとは仲良くはなれないな……。
それどころか、もうターゲットとして認識されているしできるだけ関わらない方がいいかもしれない。
……関わらずにいられる自身はないけど。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ