イベント系

□指輪
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しばらく歩いていると段々頭が冷えてきて、さっき自分が怒っていた事が馬鹿のように思えた。

「イヴァンのことを、もっと信じなきゃいけないのに……」

イヴァンはずっと年上の大人だ。自分の管理なんて自分でできるはず。
なのに、私は。
イヴァンがいつも無理しすぎていると思って、いつか倒れてしまうのではないかと怖くて。
そんなの、彼からしたら余計なお世話かもしれないのに。

「心配性すぎってよく言われるけど、ほんとそうだよね」

はぁ、とため息をつき、家を飛び出してしまったせいせいで行く場所に迷いながらも歩き続けた。
今日はいつもより寒い。
コートのポケットに手を突っ込み、顔をマフラーでできるだけ覆っているのに、それでも寒い。

「さすが、この大国は冬が厳しいね」

どこか店はないかと、前に来たときの記憶を遡っていると、後に誰かの存在を感じた。
驚き振り返ると、

「そうだよ。だってここは僕の家だもの。だから、早く戻っておいで」

そう言って笑うイヴァンの姿があった。

「だって、さっきあんなこと言ったのに」

私が下を向きながら言うと、頭上から優しい声が降ってくる。

「だって、僕のこと心配してくれたんでしょう?」

それに顔を上げると、まだ笑顔の彼がいた。
それに、なぜだか涙がこみ上げてくる。
そんな私を見て、今度は驚いた顔をするイヴァン。

「そんな泣かなくても……。あ、そうだ! 今日が何の日かって話だけど」

私は黙って続きを待つ。

「今日は、僕の誕生日だったね。自分でもすっかり忘れてたよ。君が来てくれなきゃ、気が付かなかったな」

私はその言葉を聞き、笑顔で言った。

「うん! 良かった、思い出してくれて」

そして、持っていた箱を差し出す。

「お誕生日おめでとう、イヴァン」

彼も笑顔でそれを受け取る。

「ありがとう、名無しさんちゃん」
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