それがあなたの夢ならば

□1
1ページ/3ページ

それはある真夏のこと。
私、加藤星花は成績不良のため、学校で補習を受けていた。

「あっつーい!先生まだ終わんないのー?」
「うるさいぞ、さっきからそれしか言っていないじゃないか。少しは黙れないのか?」
「だって暑い〜…」
「俺も暑い!!だいたいお前がこんなに成績が悪くなければ俺だってな、涼しい職員室で爽やかに別の仕事こなしてたはずだったんだぞ?なのになぁ、お前だけこんなに成績悪いせいでなぁ…」

だんだん先生の表情が曇り、声も弱々しく泣きそうになっていった。
あーあー、そこまで思い詰めなくてもいいのに。
別に先生の教え方が悪いわけじゃないし。
…私がテスト前まで普通に友達と遊びまくってたのが悪いだけ。
なのに…なのに!
その友達はなんで普通にいい点数取りやがるんだ!!
そんな事考えたら余計に暑くなってきた…。

「そもそも、この学校になぜかエアコンが付いてないのがいけないと思います!という訳で、先生!一緒にストライキしましょう!!」
「それもそ…ってするかど阿呆!!誰のせいでこんなことになってると思ってる!!」

鋭い先生のノリツッコミ。
はー、今日は何時に帰れるかな…。

するとその時だった。
彼との出会いによって、私の運命は大きく動き出したのだった。
ガラガラッと音がして、教室の扉が開く。
そこに現れたのは、背の高い薄い金髪の綺麗な紫の瞳を持った男子生徒だった。

「先生、少し用があるんですけど大丈夫ですか?」
「ん?なんか涼しくなったと思ったらお前か、イヴァン」

確かに、先生の言う通り何となくではあるが教室がひんやりとした空気に覆われた…気がした。

「この間頼まれたもの、やっておきました。これで大丈夫ですか?…って、あれ、補修中だったんですね?」
「…あぁ、そうなんだ。こいつ、成績がとんでもなく悪くてなぁ…」

先生(私が)初対面の人に向かって何言ってるんですか!?!?

「へぇ、そうなんですか。…僕も少し参加してもいいですか?」
「?あ、あぁ別に構わんが?」
「ありがとうございます」

彼はそう言い、私の隣の席に座った。
さっき感じた冷気が少し強くなった気がした。
少し涼んだおかげか、私もさっきよりはやる気が出ていた。

「よろしくね、えぇと…」

隣から話しかけられ、私は一瞬ビクッとしたが微笑んで言った。

「私は加藤星花だよ、よろしくね!」
「そっかぁ、星花ちゃんって言うんだね。僕はイヴァン・ブラギンスキ。気軽にイヴァンって呼んでね」

その冷気とは対照的にとても暖かな笑顔を向けられ私は少しドキッとした。

「…そろそろ続きを始めるぞ」

しまった、うっかり補習のことを忘れていた。
先生はまるで私の心を読んだように、呆れた顔でため息をついた。

「じゃあここの公式は…」

先生が公式を言おうとした時、

「そこはここをこうしてそれで次に…」

私には何が何だかよく分からないのに、隣のイヴァンが遮るようにしてすらすらと答えていく。
え、ひょっとしてめっちゃ優等生…?
先生も、

「…さすが学年トップクラスだな。完璧だ」
「学年トップぅぅ!?」
「?そうだよ?」

まるで何でもないことのように言う隣の男に私は腹が立った。
私のことを馬鹿にするためにここにいるのか!
1人で怒っていると横から、

「正確には、『トップクラス』なだけであってトップって訳じゃないんだけどね…」

イヴァンが悲しそうに言った。

「それでもいいじゃん?頭いいってことでしょ?」
「…僕にはどうしてもトップにならなきゃいけない理由があるんだ」
「…え?」
「こら加藤!喋ってるなら解け!全く誰のせいでこんなことに…ブツブツ」

先生が怒っていたので流石にこれ以上話すわけにはいくまいと思い、私は慌てて問題を解き始めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ