星海の夢

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翌日。
何事も無かったかのように家から登校する。
冬場だというのに、朝陽がとても眩しい。
これでは、朔間先輩も登校にだいぶ苦労していそうだなと、まだハッキリしない思考のまま考えていた。

「おい、漣! テメェ、今何持ってやがる!」

この無駄に騒がしい感じは……。

「あぁ、犬が……、いえ、大神先輩でしたか」
「おい、今一瞬犬って言わなかったか」

私が一瞬わざと間違えたのを、どうやら大神先輩は聞き逃さなかったようだ。
さすが、犬……じゃなかった、孤高の狼様だ。

「まぁ、それはいい。とにかく、今お前が持ってんの出せ」

手を出しながら要求してくる様は、近寄り難い雰囲気と少し怖い見た目と相まって、ただのカツアゲ現場のようになってしまっている。
視線を少し泳がせると、周りの奥様方がヒソヒソと話しながらこちらを見ていた。
あまり長いことこの状態を保つわけにはいかない。
このままでは、大神先輩が普通に悪い人になってしまう。

「はい、分かりましたよ。……これでしょう?」

私は、お昼にと思ってコンビニで買っておいた、ニンニクたっぷりの餃子を取り出した。
パッケージにスタミナがつく! と書いてあったものだから、惹かれて買ってしまったのだ。

「うわっ、くせぇ! 早くそれどっかにやれ! それか今すぐ食え!」

はぁ、とため息をついて私は渋々割り箸を取り出す。
その割り箸で一つ食べると、確かにその謳い文句にも納得できるくらい強めのニンニク味が口に広がっていく。とても美味しい。
しかし、道端で餃子を食べる日がくるなんて……。

「ぐわぁ、蓋が開くとますますくせぇ!」

大神先輩が文句を言っているが、あまり気にしない。
私はそのまますべて平らげると、臭いが残らないようにミントのガムを口に放り込む。
もう少し味を口に残しておきたかったが、大神先輩の前だ。仕方がない。
きっと、口臭ぐらいとれ、と怒られてしまう。

「やっと終わったか……」

安堵の息を吐く大神先輩の背後に、一つの影が現れた。
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