イベント系

□約束
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そして向かった先は……。

「にゃー」

店内はいつも通り猫がたくさんいる。
私は、猫が好きなので癒しを求めてたまに猫カフェに来ている。
しかし、今日だけは沢山いるのは猫だけでないようだ。

「こんなことなら来るんじゃなかったかな……」

一人で猫を撫でながら呟く。
むしろ、虚しさが増してしまった。

何となく店内を見回すと、ふとある後ろ姿に目が止まった。
紫のパーカーを着た人だ。周りに連れの様子もないので、あの人も1人のようだ。

仲間がいた事になんとなく嬉しくなり、もしかしたら私と同じようにこの場にいることに窮屈になっているかも、と勝手に思った私は気づくと彼に話しかけていた。
「こんにちは。お1人ですか?」
「!? な、何ですか……」

一瞬肩を震わせ振り向いた彼は、目は半分しか開いていないし髪もよく見るとあまり整ってはいなかった。正直少し怖い。
とんでもない人に話しかけてしまったかもしれない……。

考え込んでいると、その人は言った。

「……もういいですか」

私は慌てて話しだす。

「も、もし1人なら、少しでいいので一緒に話しませんか?」

今更ながら思った。
私、今かなり怪しい人だ……。
やってしまったと思いつつ、返答を待つ。

「……別にいいですけど。でも、おれなんかといても楽しくないと思いますよ」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます」

無理だと思っていただけに、嬉しくて心の中でガッツポーズをする。
少しはしゃいでいるのを悟られないよう、私は話題を考えた。

話すのは好きだが、知らない人となるとやはり緊張していい話題が出てこない。

「えーっと。猫、好きなんですか?」
「そりゃ好きじゃなきゃここまでこないでしょ」

そりゃそうだ。
早くも話題が消えてしまった。
もっといい話題は……。

「そ、それじゃあ、ご職業は……」

全然いい話題じゃない!
すると、彼も少し悩んだようで、ほんの少し間が空いてから答えが返ってきた。

「ニート」
「へ?」

今この人はなんと言った?
いやまさか、そんなニートだなんて、何かの聞き間違いだろう。

「今なんて?」

恐る恐る聞き返すと、面倒くさそうに言い直してくれる。

「だから、ニートだって」
「えぇ!」

思わず叫んだ。
店内の目が一斉に私に集まってくる。
恥ずかしさに、顔が自然と熱くなっていった。
私からすると、ニートなんて有り得ない。最低な職業だ。
でも、猫好きに悪い人はいないと思いたい……。

「あの、あんまり恥ずかしいことしないでくれます? おれまで被害受けるんですけど」
「ご、ごめんなさい」

頭を下げながら謝ると、はぁ、とため息が聞こえた。
やっぱり、知らない人に話しかけるもんじゃないな……。

「ごめんなさい、お邪魔して。私、もう行きますね」

私はもう1度謝ると、店を出た。
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