東京卍リベンジャーズ Short
□碇草
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※梵天軸
( 碇草の花言葉 ▷ あなたを捕える、キミを離さない )
「竜胆」
「…その呼び方すんの珍しいな、どうした?」
「……」
普段は "りんちゃん" 呼びの私に不思議に思ったらしい竜胆が黙る私の頭を心配そうな顔で優しく撫でる。こんな彼が浮気なんてするはずないと、一人納得して打ち明けることにした。
「竜胆が女の人と歩いてたって…」
「……誰情報?」
「三途くんに、写真見せられたんだよね。なんか、中華っぽい赤い服の、綺麗な銀色の長い髪のお姉さんと一緒にいる写真」
「……アイツ殺す…てかそれ浮気とかじゃねぇぞ。
銀色の長い髪とか絶対九井だろ…ちょっと待て」
そう言って携帯を取り出した竜胆が誰かに電話を掛け始める。しばらくの呼出音の後、その画面にパッと銀色の髪が写った後、男の人の声が聞こえた。どうやらテレビ通話をかけていたらしい。
「……なんだよ灰谷弟。つか何でテレビ電話?」
「いきなり悪いな…九井。
どっかのヤク中が俺の女に、俺が銀色の長い髪の女と浮気したとか吹き込んだ上にご丁寧に写真まで見せやがったらしい。赤いチャイナっぽい服の銀色の長い髪、誰だと思う?」
「…………キッモ…この間の取引ん時だろそれ。俺アイツの中で女にされてんの?普通にスクラップ案件だわ」
「悪いんだけどさ、そん時お前が着てた服とか写せる?」
「あー、それくらいは別に構わねぇけど……これだろ?」
「おーそうそう」
パッと画面が彼の顔から赤い服に切り替わったのを確認して、ちらりと私を見た竜胆が口の端を上げて見せる。
「竜胆。誤解解けたならもう切って良いか?」
「おーいきなり悪かった!サンキュな。助かったわ」
そう言って電話が切れると、ニコニコした竜胆が私へ顔を向け直した。
「にぼし、誤解解けた?」
「…変に疑ってごめん。
りんちゃんが浮気なんてするわけないのにね」
「……お前以外興味ないからな。
少しでも不安に思ったら今みたいに何でも言えよ」
「うん、そうするね」
頷いた彼が、そのまま私をぎゅっと抱き締める。
「……りんちゃん」
「なに?」
「……好き。ずっと一緒にいてね」
腕の中から見上げると、照れたのかほんのり頬を赤らめた竜胆から触れるだけのキスが降ってきた。
「あー……俺も、スキ」
少し目線をずらして、ぶっきらぼうにそう言う彼が可愛くて愛しくて自分以外の誰にも渡したくないと、ただ強く彼を抱き締めた。
「……にぼし、どうした?なんかあったのか?」
「……りんちゃんが私以外好きになったりしたら…
私目の前で自殺してやるから」
「物騒だな…絶対ないから安心しとけ。
お前の事好きって俺の気持ちは、誰にも渡さねぇよ」
少し考えた後、どこか嬉しそうに彼が笑って言った。
"これでもまだ不安か?" なんて優しい顔をする竜胆に私は首を振るしか出来なかった。
浮気を疑う私に怒る訳でもなく、心当たりのある相手に電話までかけて、その上私の心配までしてくれるなんて、こんな優しい彼氏に出会わせてくれた神様に、心の中でこっそりとお礼を告げた。
碇草
( いっその事、彼を閉じ込めてしまいたい )
( お前しか見えないし、俺しか見て欲しくない )
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