奇跡

□dialogue
1ページ/17ページ




 薄暗い部屋。
家にはボクしかいなくてどこにも行くことが出来なくて、なんだかむなしい気持ちになってきた。
『クズを沢山書けて楽しいです!!』なんて言って、笑えたらいいのになぁ。
クズみたいな文章を手が震えながら打つのも、なんだか悲しくなってしまう。

わけがあって人を愛すことができなくなったので、文章に託すことにした。
 ここなら、誰も入ってこられないし、販売作品に使われていたなら、その時点で摘発できるかもしれない。

二次元の中は、作品の中は他者が侵入することがありえない空間。
三次元は三次元だ。
少なくとも作品を汚すようなまねをしてまでその『他者に』入り込む人間は、作家とは呼ばないだろう。

その線引きを壊すことは、もはや、作品を愛していないのだ。

ただの自己顕示欲の塊。
わざわざ塗り重ねてまで、作者に話しかけるなんて作家が居たら、それはやはり、自己顕示欲の塊だ。
作品などどうでもいい
とあしらって、自らを主張したい人間なのだと思う。

どうでもいいと投げ捨ててまで主張されても、なにも響かない。



 そういうやつに憑かれた人はわりといて、ボクや、あの子のような、そういう存在で……
多くがおかしくなってしまったし、ボクも、あまり長生きしそうな気はしない。

 少なくとも誰かの作品を破壊しながら『好きだったんだ!』と叫ぶのはキチガイだろうし、それに憑かれた人間を増やすことは確実に『好意の押し売り』による『自己嫌悪』からの自我の破壊だ。

クズが楽しいならずっと描いてろ。
そしてかかわるな。


目を閉じながら、ボクは祈った。
広い広い庭に、ぽつんとある墓石の前に跪いて、呟いた。

「ごめんね」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ