掌編集
□家
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敵に家を囲まれた。
周りに迷惑をかけないように、殺すならすればいいやと、すぐ諦めた。未練んなんかないくらいの生き地獄だったんだ。ようやく解放されるね。
今のバラックは、それなりに快適に努力してたから居心地がよかった。
でも限界みたいで。
さっさと荷物をまとめて家を畳もうとした。
よなか、目が覚めると
隣から突然音がして、
カタカタカタと、ものすごい勢いでなにか釘を打ち込み始めた音を聞いた。
ぼくが家を畳んだ、その場所に。
勝手に家をたてなおそうとしている。
やめてくれよ。
またぼくが狙われる。
きみはバカだな。
無駄なことをするなよ。
言いたいことがたくさん浮かんだが、
ぼくは言わなかった。
隣のバラックの空いた場所で身を潜めていた。その隣はあの場所だった。
また標的を作り直すなんて、迷惑にもほどがあった。あれがあのまま、あそこにあれば狙われ続けるに決まってる。
やっと、旅にでたかったのに、ぼくは逃げることも、許してもらえないんだね。
朝目覚めたら、バラックに行った。
建て直された部屋は
壁に沢山の穴を開けられていて、こんなものを見せたいやつでもいるのかと、ぼくは動転した。
ぼくはまだ、おわれてる。
あとで聞いた話。
「何発耐えられるかやってみようぜ」
銃器を使った狂ったテロリストのそんな賭け事が、あの一帯にあったらしい。
最後まで残りそうな場所に、勝手に選ばれたので、
賭けたやつらが必死になったと。
あの場所は、夜中の補強のせいで無理矢理のこった。
ぼくはまだ、
他人が家主になろうと狙う感覚から怯えながら、
ぼくが生きていることに怯えながら、
次の賭けにならないように、
願うことにしている。