edelweiss

□愛してるを言えなくて
1ページ/2ページ

なんで、なんで?!あのとき素直になれてたらこんなことにはならなかったのに!もう自分を責めることしか出来ないんだ


「ねぇしお、これさ書いてくれないかな?」
酔っ払ったれにちゃんがそう言いながら婚姻届けを出してきた。ほんとはうれしかったけど恥ずかしくて素直には喜べなかった
「まぁたそうやってふざけて、ほらもう呑みすぎだよ、」
「いぃーじゃーん、書いてよ、書いても出せないことはわかってるけどさ、とりあえず、ね?」
「や、やだよーこんな紙切れ1枚に書いたところで意味無いんだから、ほらほら、どうせ今日は呑みすぎて明日になったら覚えてないでしょ?」
そう言うとれにちゃんは薄笑いで小さな声で言った。
「...意味ならあるんだよ?」
「え?」
「あんまりさ、認められるような関係じゃないしゃん、世間にはさ、だからちょっと、形として証明みたいな?ものが欲しかったんだよ笑」
ちょっといらっとした。酔っ払ったノリでこんなこと言ったのかって、ちょっとでも期待した私がバカみたいじゃん
「...出せないのに?」
「しおりはさ...ほんとに私のことすき?」
「...こんなにいっしょにいるのに笑わかるでしょ、言わなくても」
「わかんないよー、てかときどきさしおりのことわかんなくなるよ、」
酔っ払っいと言えどもあまりにもしつこいれにちゃんにイライラを隠せなかった。
「.....わかんないならさ、なんでこんなもの書かせるの?」
「...こんなもの....あー、ごめん、いいよ、ちょっと外でるね、忘れて、忘れて」
そう言うとれにちゃんは外に出ていった。私は婚姻届けを見つめることしか出来ず追いかけることが出来なかった。


気がつくとソファーで寝ていたらしい。体が痛くて目が覚めた。れにちゃんはまだ帰ってきてないみたいで家中どこを探しても見つからない。すると夏菜子から一本の電話がかかってきた。
「もしもし?」
「しおり?!やっとでた!れにが事故にあった!!」
目の前が真っ白になった。頭で理解する前に体が動いていた。
家の近くの交差点で居眠り運転をしていたトラックに思いっきりはねられたらしい。私があんなことを言わなければ、素直に婚姻届けを書いていたら、後悔だけが頭のなかを駆け巡る。
「ごめんなさい、ごめんなさい、」
泣いて謝ることしか私には出来なかった。


-数日後-
病院に行くと先に来ていた夏菜子とあーりんかられにちゃんの目が覚めたと聞いた。すぐに病室に行こうとしたけど止められた。
「詩織、落ち着いて聞いて。れにね、記憶..無いんだって、」
夏菜子の言っていることの意味がわからなかった。きおくがない?れにちゃんの?気がつくと涙が頬を伝っていた。

病室に行くとベットにすわってぼんやりしているれにちゃんがいた。れにちゃんがゆっくりこっちに顔を向ける。
「...?だれ?」
その言葉を聞いた瞬間これは私への罰なんだ、そう思った。覚悟はしていたけど記憶がないって、好きな人に忘れられるってこんなにつらかったんだ、

何日か過ぎてれにちゃんは退院することになった。うちでもう一度ちゃんと一からやり直そう。そう思った。
「なにかわからないことがあったらその都度きいてね、」
「ありがとう、あのさ、詩織ちゃんと私って、」
「しおり、」
「ん?」
「呼び捨てでいいよ、その方が楽だし。私とれにちゃんは普通のメンバー同士だったんだけど、私が独り暮らしをしようとしてたところにれにちゃんも同じ時期に独り暮らしを始めようとしてて、せっかくならいっしょに暮らそうかってなっていっしょに暮らしてたの、」
大丈夫。笑えてる。いつまでも甘えてちゃだめだ。


-れにちゃん目線-
"しおり"とは結構長くいっしょに暮らしていたみたい。料理も家事も器用にこなす"しおり"とは暮らしやすかった。でも、なかなか自分のことは話そうとしないし、何を話していいかわからなかったから会話はすぐに途切れてしまう。会話をしようとしてもいつも張り付けたような笑顔をする。居候させてもらってこんなこと言ったらあれだけどまぁ居心地は悪い。気分転換に昼間に散歩に行こうとした。
「れにちゃん!?どこいくの?まだおとなしくしてなきゃ!迷子になっちゃうよ?!」
ここ数日のストレスと今の一言で完全に頭に来た。
「もうさ、ほっといてくれないかな?居候させてもらっててこんなこと言うと恩を仇で返すような感じだけどもう息苦しいよ!」
「そ、うだよね...ごめん」

近所を散歩しているとなんだか懐かしい気がしてきた。風景、匂い。家より気が楽だった。
でも、なにか足りない気がした。落ち着かなかった。

家に帰るとしおりはどこかに出掛けたみたいでいなかった。ちょっとした出来心でしおりの部屋に入ってみた。なんであそこまでただのメンバーによくしてくれるのか、面倒を見てくれるのか気になった。机の上に1枚の紙が置いてあった。
「ん?なんだこれ?...こ、んいん、とど、け?」
頭のなかに一気に記憶が戻ってきた。
あの日私は詩織と婚姻届けを書きたくて、でもシラフじゃとても恥ずかしくて言えないからお酒の力を借りて言ったんだ。なんで、なんでこんな大事なことを、大切な人を忘れてしまったんだ!あんなに愛してる人を傷つけたんだ!

-しおり目線-
帰りたくない。もう、これ以上好きな人に嫌われたくない。
「あー、前のれにちゃんに会いたいなぁ」
空に向かって独り言を呟く。
「..ぃ、...おりぃー!しおりー!」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「っ、はっ、やば!幻聴聞こえるようになっちゃった、」
会いたいなぁ、れにちゃん、
「しおり!!」
後ろを向くと汗だくで息を切らすれにちゃんがいた、
「...!なんで?」
「しおり、ごめん、ほんとにごめん!書いてくれたんだよね、これ、」
そういって目の前に出された婚姻届け
「....思い出したの?」
「うん、忘れててごめん、なんて謝っても足りないけど、もう、ほんとに最低なことした。」
「ううん、ちがうよ、れにちゃんはなんにも悪くないの。素直に、なれ、、なくて、ごめ、、っなさい。」
言いたいこと一杯あるのに声に出来ない。れにちゃんの腕のなかで涙が止まらない。でも、これだけは言っておかなければいけないと声を振り絞る。
「れ、にちゃ、、っあいっ、して、る!!」
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ