edelweiss

□ありがとう
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あなたと最初にであったときのこと、あなたは覚えてますか?

「あっつー」
数メートル先の視界は暑さでぼやけ、セミの声が響き渡り空一杯の青、生い茂る緑。水の流れる川の音を聞きながらお墓を掃除する。
「久しぶりになっちゃったね、あんまり来れなくてごめんね」
お墓に話しかけながらお花を供えていく。もう、あれから5年たったけどまだ昨日のことのように覚えている。最後に見たももかの姿ははっきりと頭の中に残っている。あの日もこんな暑い夏の日だった。


「...ももか遅いなぁ」
お互いに素直じゃない私たちはデートをすることも持ちかけることもあまりなかった。でもこの日は勇気を出してももかをデートに誘ってみた。なんてことないように過ごしていたけど前日から楽しみで、何着てこうかな、どこいこうかなとかいろいろ考えていた。でもももかは1時間経っても2時間経っても来なかった。
突然知らない番号から携帯に電話がかかってきた。

気が付くと私は無我夢中で走っていた。病院について急いで病室に入った。
「ももか!...ももか?...もも..か..?」
一瞬ももかの姿に私は理解が出来なかった。顔に白い布がかけられ手は体の前で組まれていた。頭が真っ白になった。
「なんで..ねえ!起きてよ!...ももか!」
ももかの変わり果てた姿を目の前にして泣き叫んだ


それからの私は笑い方を忘れてしまったかのように笑わなくなった。
「かなこ、ちゃんとご飯食べてる?最近細くなりすぎじゃない?」
れにが心配して声をかけてくれた。
「それだとももかも心配しちゃうよ。」
変わり果てた私にれにはずっとずっと寄り添ってくれた。


ももかが亡くなってから3回目の夏。ようやく少しずつ心の整理がついてきた私にれにが話がしたいと言われた。
「かなこ最近変わったね」
「そうかな、でもちょっとずつだけどももかの死を受け入れられてきたのかもね、」
「ねぇかなこ、きっとまだももかのこと好きだと思うけどさ、まだ好きじゃなくてもいいから私と付き合ってもらえませんか?かなこが好きです。すぐに好きになってとは言わない。ずっとももかを思っててもいい。それでも好きです。かなこのこと笑顔にさせます。」
びっくりした。でもずっと立ち直れない私のそばに居続けてくれたのは紛れもなく今目の前にいるれにだった。心強かった。
「...ありがとう、でもいいの?私で、きっとももかのこと忘れられないよ?ずっと」
「かなこがいいの、てかももかのことは忘れないで、ずっと好きでも構わないよ、ももかのことが好きでも私のこといつか好きにさせるから。」
力強い言葉に私の心は決まった。



「かなこ帽子被りなよー」
「れにやっときた、車、鍵閉めた?」
「閉めたよ。大丈夫、」
「掃除しといたよ、手合わせよ」
「ありがとう。そうだね、」
ろうそくに火をつけ、線香を供えて二人で手を合わせる。
先に手を合わせ終えた私に対してなにやられには随分長く手を合わせていた。
「れに、随分長かったけどももかに何話してたの?」
「んー?ないしょ!」
「えー?教えてよー!」
太陽が沈みかけてオレンジ色の空の下で幸せな二人の声が響いた。
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