edelweiss

□世界の終わりから見た光
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私には親がいない。家がない。帰る場所がない。私が小さい頃に両親は交通事故で他界し、祖父母も私が生まれる頃にはもういなかった。両親に兄弟はいなく、一人きりとなった私は孤児院に入ることとなった。両親がいないからといじめられることに怯え、教室では存在感を消して過ごしてきた。だからクラスメイトは私の名前すら知らない人もいると思う。誰とも関わろうとしないし、関わろうと思われない。それが私の普通だった。君が来るまでは。

新しい学年になり、クラスが変わった。
「ねえ、玉井さん?だっけか?」
となりから聞こえた声に驚いた。
「!...なに?」
びっくりしすぎて素っ気ない返事になってしまった。
「隣の席だったから。私夏菜子。よろしくね」
「ぁ、あぁ、私は詩織。よろしく」
「ねえ!今日暇?もし空いてたら一緒に遊ばない?」
「...え?」
今まで人と関わろうとしてこなかったからこんな風に誘われることがなく、初めてのことに戸惑う。
「いや、あの、よかったら仲良くなりたいなぁー、なんて...だめかな?」
純粋な目で少し上目遣いに言う姿になんだか物珍しい人も居るもんだと少し口角が上がるのを感じる。
「...そんな風に言われて駄目なんて言えないでしょ、いいよ、このあとどこで待ち合わせする?」
初めて仲良くなれそうな人と出会えて嬉しいのに口から出るのはひねくれた言葉ばかり。それでも君は満開のまぶしい笑顔を向けてくる。
「やった!じゃあ、このあと...」
わくわくしたような表情の君を横目に頬を掠める冷たい風に希望を感じた。


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