A3!
□夜更かし
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舞台の小物の確認していると、コツコツと足音が聞こえてきた。誰だろう。確認すると、左京さんのようだ。
「左京さん、どうされたんですか?」
「まだやってんのか」
「はい、あとこれだけなので」
声をかけた私に、左京さんは驚いたみたいだ。ちらと時計を見ると、すでに二十三時。そんなに時間経ってたんだ。
「ちょっとは休めよ」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ、慣れてるので」
不器用な心配の仕方に、笑いながら答える。左京さんは私の返答が不満だったようで、がしがしと頭をかいた。
「はぁ……ちょっと待ってろ」
そう言って彼は来た道を戻っていく。はて、と思いながら私が大人しく待っていると、しばらくして左京さんが戻ってきた。その手にはスポーツ飲料水のペットボトル。驚いていると、「ん」と差し出される。
「え、いいんですか?」
「いづみ、遅くまでお疲れさん。あとは俺がやっとくよ」
「で、でも演者さんにそんなことっ」
「夜更かしは肌の敵だろ?早く寝たほうがいい。おやすみ」
する、と私の肌を撫でながら微笑む左京さん。三十路とは思えない男前だ。これで寝ないと言っては左京さんに恥をかかせてしまう。私は言葉に甘えて寝ることにした。
「あ、ありがとうございます!おやすみなさい!」
ぺこりと頭をさげて自室へと向かう。左京さんの指が触れた、ほっぺが火照っていた。