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□日常
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「紡ちゃん」
「きゃっ」
「そんな驚かなくても」

街を歩いていると突然後ろから声をかけられて飛び上がる。振り返ると、大和さんが笑顔で立っていた。ジャージにつっかけというおじさんみたいな格好をした彼はコンビニの袋を持っている。中身はビールとおつまみらしい。

「大和さん、お疲れ様です。またビールですか?」
「そう、お兄さんドラマの撮影頑張ったからさ」

隣にきた大和さんに聞くと、そう返事が来た。スケジュールを頭に浮かべて、今日が撮影の最終日だと思い出す。今回は監督が厳しい、って言っていたような。

「監督さん、厳しかったですか?」
「おっかねぇよあのおっさん。新人の女優さんにNG出しまくってたわ。あの人演技うまいのにな」
「そうなんですか……大和さんはどうでした?」
「……気になる?」

大和さんさんがこちらを向いて微笑み、首を傾ける。あざとい。

「き、気になります!」

そう答えると、ずい、と彼の顔が近くに寄ってきた。驚いて固まっていると、耳元で囁かれる。

「紡ちゃんがお兄さんにいいことしてくれたら、教えてあげるよ」

いつもより低い声でそう言ったあと、彼は寮の中に入っていった。
顔を赤くして立ち止まった私を置いたまま。

「いいことって、なんだろう……」
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