短い恋のお話。

□破天荒彼女(花京院)
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いつもと同じ朝

話合わせたわけではないがいつも一緒になる承太郎と学校へ向かう。

承「…そろそろ来るぜ。」

花「…そうですね。」

『花京院、空条、おはよーっ!』

花「名前、おはよう。今日も元気ですね。」

『それが取り柄だからね!先行ってるよー!』

この元気な人は名前。
見た感じは清楚なお嬢様タイプ。
だが、黙っていればの話だけど。
喋ればあの承太郎にでさえ「空条」呼び。

ゆっくり歩いて教室に着くやいなや

『遅い!そして花京院、お願い!このとーり!』

何をお願いされているかというと…

名前はなんと美術部で
絵を出展すればなんらかの賞には必ず入っている実力者。

そんな名前が今どうしても描きたいもの

それは…

『どーーーしても花京院の裸体が描きたいの!』

花「絶対に承太郎の裸体の方がいいと思いますが…」

『空条はガチでムキムキだからダメ!花京院くらいがちょうどいいんだよー…ね、お願い!』

花「熱心に言ってくれてるのに残念ですが…お断りします。」

『うー…まだ諦めないからね!』

名前はまた走ってどこかへ行ってしまった。

承「いい加減受けてやったらどうだ。」

花「他人事だと思って。承太郎なら受けますか?この話。」

承「当たり前だ」

花「…」

承「断る。」

とにかく、こんな破天荒な名前のことが…

花「それにしても、たまらなくかわいい。」

心底好きだ。










放課後。

前から一度、名前が絵を描いているところを見てみたくて
美術室へ向かった。

花「あ、いるいる。」

少し開いた窓から名前が見える

自分の身長ほどある大きなキャンバスに真剣な顔で向かっている

その横顔に胸がときめく

…まぁ、顔に絵の具がついているのだが

それがまた名前らしくてかわいい

本当はまだ見ていたいが、もし気がつかれたらこの場でひん剥かれそうなので

そっと美術室を後にした。






それから数日

放課後、図書館に行った帰りに、聞き覚えのある声が聞こえた

花「…名前…?」

橋の上で3人の男ともみ合う名前

『こんなに小さい猫、こんな所から落としたら死んじゃうだろ!』

男「お前に関係ねーじゃん」

『こっちに渡せ!』

男の手には手のひらに乗るくらいの小さな子猫

男「やだね」

花「名前!」

『花京院!』

こっちを向いた名前の唇には血が滲んでいた

それを見て頭で考えるより先に体が動いた

子猫を持っていない男2人を殴って

『花京院っ』

残る1人に目を向けた

男「ち、ちくしょう!」

男は子猫を空高く放り投げてにげた

『あっ!』

名前は橋から落ちるギリギリで子猫を受け止めたけど

『よ、よかったー…あれ…』

名前の体はスローモーションのようにゆっくりと落ちていく

『落ちる…っ』

花「名前!…くっ…ハイエロファントグリーン!」

子猫を抱きしめ、ぎゅっと目をつむった名前はスタンドによってゆっくり地面に下ろされた

『………あれ、私…落ちて…浮いて…?』

花「よかった…」

『花京院…ねぇ、私今…』

花「落ちるかと…思った…」

『花京院…』

花「もし僕が来なかったら…」

『だって、猫…』

花「あぁ、もう…ほんとに…」

『ごめん…なさい…』

花「唇…切れてる…」

『あ、猫を奪い返そうとした時にあいつらの手が当たって…』

花「女の子なんだから、顔にキズなんかつけてはいけませんよ。」

名前の唇を指でそっと撫でたら名前はびくっと肩を震わせた

花「ごめんなさい、痛かったですか?」

『ううん…』

今度は自分の唇で
名前の唇の傷に触れた

花「名前…」

傷が痛くないように本当に触れるだけのキスを繰り返すと

名前からもキスを返してくれて

次第にお互いの舌をつつきあったり吸いあったり

頭の芯が痺れるようなキスをした

そして子猫が小さく鳴いてから
2人とも我に帰った。

花「名残惜しいけど、帰りましょうか。送りますよ。」

『うん、ありがとう。』

花「立てますか?」

『大丈夫!』

拍子抜けするくらい、名前はいつも通りで

花「かわいい。」

『ね!真っ白〜ふわふわ〜』

僕は名前のことがかわいいって言ったんですけどね。

名前の家に着き、名前が家に入ったのを見届けてから
自分も家路についた。









翌日

『花京院おはよーっ!』

花「名前、おはよう。」

『空条、おはよ。今日も無愛想だねー。』

承「放っておけ。」

『花京院聞いて!ノリがね!』

花「ノリ…とは?」

『あ、昨日の子猫の名前!花京院にも助けてもらったから、ノリにしましたー!』

花「…そう…」

承「ぶふっ」

花「承太郎、笑わないで下さい。」

『昨日の花京院、かっこよかったから。』

花「名前…」

承「昨日?何があった」

『んー、話すと長くなって面倒だから、花京院に聞いて!』

花「はは」

『花京院。』

花「何です?」

『今度、家に行っていい?』

花「いいですけど…」

『ふふっ』

名前は僕の耳元で

『またキスしようね。』

と笑った。

花「ふふ。いいですよ。」

『裸体も描かせてね!』

花「…えっ…」

破天荒な僕の彼女は
今日もかわいいんです。


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