短い恋のお話。

□天邪鬼な2人(露伴)
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仗「げ。あれ露伴じゃねぇか?」

億「ほんとだ。名前さんと一緒だ。…あの2人って付き合ってんのか?同棲してるっつーウワサもあるけどよぉ。」

仗「同棲してんのかどうかは知んねーけどよ…どう見てもあれは恋人同士って感じじゃねーぜ。」

土曜日の昼下がり。
カフェ・ドゥ・マゴでお茶をする。

仗・億「露伴せんせー、ちわーっす!お茶ごちそうしてくださーい!」

露「ちっ、クソったれ仗助にアホの億泰。気持ちのいい昼下がりにイヤなヤツらに会った。絶対イヤだね。」

『こっちは全っ然気持ちのいい昼下がりじゃないけどね。なんでわざわざ私が座ってる席に来るのよ。』

露「見ての通り、テーブルは満席。見知った顔だったから、まぁあまり気は進まないがしょうがない、と思って座っただけだが。」

『気が進まないのなら座らなきゃいいのに。あ、ほら、向こうの席、空いたみたいよ。』

露「お前が行けばいい。」

『なんで?なんで私が?』

億「…なぁ、露伴と名前さんってよぉ、同棲してんだろ?なのになんでそんな仲悪ぃんだ?」

露・名前「同棲じゃないっ!」

露「同居だ。いや、居候だ。半ば勝手に転がり込んで来たんだ。」

『自分の言った事も覚えてないなんて相当頭悪いのねー、岸辺露伴くん。』

露「一緒に住もうなんて言った覚えはないと言っているだろう。どんな耳をしているんだ。」

『言ったでしょ。同窓会の時!私が「道路の拡張で立ち退きになる」って言ったら、「うちに来るといい。どうせ1人暮らしだし。」って言った!』

仗「…億泰、帰ろうぜ。」

億「だな。」

名前は高校の同級生だ。
なぜかコイツとはいつも口論になる。
いちいちつっかかって来るし。
もっと普通に話せないのか?

『さぁ、ムカつくから帰って夕飯の準備しようっと。夕飯までには帰って来てよ。』

露「ああ。今日は食える飯ができるといいけどな。」

『毎食完食するくせに。』

露「食材がムダになるともったいないからね。ただそれだけだ。」

しかし…今日は早めに帰ったほうが良さそうだ。
雨の予報が出ていたし、雲行きも怪しくなってきた。





露「…今日はまぁまともな物が食べれたな。」

『素直に美味しかったって言えばいいのに。』

露「美味しいと思ってないのに美味しかったなどとは言えない。」

『ああ、そうですか。今日もお口に合わなくてすみませんでしたねー。ほんっと、頭に来るったら。』


夕飯を終えて入浴をすませた頃…
ひどい雨とともに雷鳴が鳴り響く。

露「降り出したな…」

『きゃああああああ!』

露「な、なんだ!」

名前の悲鳴が聞こえて、慌ててリビングに向かうと

僕を見るなり名前が抱きついてきた

露「お、おい名前、どうした!」

『かっ雷…っ』

見ると肩がかすかに震えている

露「雷が怖いのか。子供みたいに…」

なおも鳴り響く雷鳴にまた名前は悲鳴をあげると、
しゃくりあげて泣き出した。

露「お、おい…」

さすがの僕も泣き出した名前にどうしたらいいのかわからず

露「な、泣くんじゃない、大丈夫だ、この家に雷なんて落ちないから…」

と言った瞬間、今度は辺りが真っ暗になった。

耳がどうにかなりそうなほどの悲鳴と、僕に力の限りしがみつく名前

なんだか無性にかわいく思った。

露「落ち着くんだ。僕がついてるから。」

名前の背中をぽんぽんと子供をあやすようにさする。

髪を撫でて

そのまま髪にキスをする。

露「名前?こっち向いて?」

名前は僕の腕の中で首を横に振った。

『やだ…』

露「なんで?」

『私…なんかおかしい…露伴にドキドキするなんて…』

また雷が鳴り、名前が僕にしがみつく

露「雷のせいだ。名前が僕に抱きついているのも、ドキドキしているのも…僕が名前を…かわいいと思っているのも…」

『露伴…』

びっくりした顔をして見上げた名前がまた顔を下げないように頬に右手を添えて

おでこに
まぶたに
頬に

そして唇に

キスをした。

露「…こんな時くらい素直になろう。僕は君が好きだ。」

『露伴…?』

露「同窓会の時「うちに来い」と言ったのももちろん覚えている。酒の力を借りて言った。そうじゃないとたぶん…言えなかった。僕はもうずっと前から…』

そこまで言って

名前の唇にもう一度軽くキスをしてから

露「好きだ。」

そして
深く長くキスをした。

『露伴…私も…露伴が好き…』

キスの間に途切れ途切れで名前が言った。

露「知ってる。」

『露伴…大好き…』

ああ、もうかわいすぎて頭が爆発しそうだ

露「寝室に行こう。雷なんかわからなくしてやる。」

僕は名前を抱き抱え
寝室に行くと
名前をベッドにそっと寝かせた

『露伴…っ』

露「…怖がらなくていい。僕に任せて…」








翌日

小鳥のさえずりで目を覚ました

僕の腕の中には小さな寝息をたてて眠る名前

昨夜の事を思い出して

顔がほころぶ

白く細い肩にそっと毛布をかけ直し、まぶたにキスをして

そして、また名前を抱き寄せてもう一度、眠りについた。









その後、僕たちは何か変わったのかというと
想いを打ち明ける前とさほど変わらず

露「カレーをマズく作れるのもある意味才能だな。」

『だから!どこがマズいわけ!?私には十分美味しいんですけど!』

露「あれが美味しく思えるなんて、かなりのバカ舌だな。」

『露伴こそ、舌がイカれてるんじゃない?』

仗「まーたやってるよ、あの2人は。」

億「でも婚約したってウワサだぜぇ。あくまでウワサだけどよぉ。」

仗「…それはウワサじゃあないかもしれねーぞ。見てみろよ。」

億「?」

前と違うのは

2人の手は

しっかりと繋がれていることだった。


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