わえわえ短長編つめ

□【tngr】籠絡※
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「今夜、トン氏を抱く」
黒い軍服に身を包んだ男は、唐突につぶやいた。

「はぁ…?」
呆れた声が返ってくる。
俺の想い人…トントンは夥しい量のプリントを整理しながらこちらを見る。

「なんでそんなことサラッと言えるん…?」
「決まったものは決まったんだ、仕事に専念しろ」
何食わぬ顔で作業を続けているつもりだが、これでもかなり勇気を出した方だ、心臓の音がしつこいほど鼓膜に纏わりついている。

「なんや…いっつも自分が啼かせられるんが不服だったんか?」
からかう様にこちらを覗き込むトントンに、「うるさい」と一喝すると、なおも肩をすくめて笑う。
図星だった。

…お前だけが、俺を好きなわけじゃない

俺だって、トン氏を愛している。

それなりの、いや、それ以上の愛ぐらいはあるつもりだ。

今夜、それを証明してやる。

「耳真っ赤やで」
「…!!?」
驚いて耳を両手で隠す。トントンは ニヤニヤとした笑みを浮かべ、俺を弄るのに満足したのか、定位置に戻る。

あぁ…調子が狂う。
この男と一緒にいると、何もかも丸め込まれてしまう。不満ではあったが、愛おしくも感じる。それが実に不思議だった。



「グルさん、ほんまにやるんか?」
「…当たり前だ」
ボタンを外し、ネクタイを引っ張って緩める。

「ん、好きにしてええで」
黒いタンクトップのトントンは優しく笑い、ここ会議室の床に腰を下ろしている。

なにしろ、二人の自室は書類で溢れかえっており とてもベッドが使える様な状態ではなかったのだ。

メンバーが集まり議会を行う、ここでトン氏を抱く…。その背徳感に、呆れるほどゾクゾクした。



トントンのベルトを外し、着衣を膝まで引き抜く。そして、猛ったものを咥え込む。
柔らかい舌を這わせるたび、ちらちらと相手の反応を伺ってしまう。
背中をかりかりと掻くと、それにあわせてトントンのつま先が跳ねる。
「…ん、っふ…」
「…っ…ええよ、グルさん。顔見せて」
自分でちゃんと感じてくれている、そのことに少し喜びを感じる。


濡れてきた先端にキスをすると…突然、トントンの指がグルッペンの乳首を啄んだ。

「あっ!!っ」

「続けてや、グルさん」
手が震え、腰に力が入らない。視界ががくがくと揺れ、トントンのものを愛撫する暇が見つからなくなる。

「んぁ…っ…トント、ン…やめ…」

「可愛え、可愛え…こんなんじゃ、全然アンタが足らへん…」

「んっ…っ」
張り詰めていた緊張の糸はいつの間にか性感で吹き飛び、ぷつっと切れたかと思うと 床の上に小さな水溜りをつくる。


「はぁ、っ…乳首だけでイッたんか…?やらしーわ、グルさん」
呼吸を整え、呂律の回らない舌で返答を試みる。
「っふ…今日、は…俺がっ、抱く、って…」
そう言ったは良いものの、自分から攻める気はとうに失せていた。
このまま、いつものように、ぐちゃぐちゃに犯してほしい、そう思ってしまった自分が情けない。
「じゃあ見本見せたるわ…」
「はぇ?、ちょ!!!おまえ…!」
トントンは軽々とグルッペンの腰を抱き上げ、机の上に肘をつかせる。
そのときにはもう、凄い力に抵抗する気はなかった。



「あっ、あっ…っ……う…トン、トン氏ぃ…」

「声我慢しとる?ええよええよ、誰も来ぉへんし」

「っ、や、だ…」
前を爪で優しくなぞられる。

「だ、め…っ机汚れるっ、からぁ…」
こんな、こんな…情けない、恥ずかしい。

快楽が溢れ、体を震わせる。

「あーぁ、机汚しちゃったなグルさん。そこ、僕の席なんねけど」
「……」

「グルさん…?」

子供みたいな自分に呆れる。
大切な人を愛したい。

けど、それ以上に。…愛してほしい。愛されたい。

「もしかして泣いとる?」
「…誰っ、が…」
こちらをキッと睨みつけると、トントンはぎょっとしたような表情を見せる。
「ごめん…嫌だったん…?」

ぬるい水滴が首を伝い、初めて自分が泣いているんだと理解した。
「…グルさん、」
トントンの舌が入ってきて、グルッペンは其れを受け入れるように自らのものと絡ませる。
歯列をなぞられると、萎えていたものも直情に反応する。

自分でも自分がよくわからない。
トントンはこんな自分に、きっと幻滅するだろう。

「トン氏…好きって、言ってくれ…、」

言ってから、我にかえった。
変なことを口走ってしまった、と軽く後悔する。

「っあーー、もう…」
トントン は頭を掻き、手で顔を覆う。
「そういうとこも含めて、アンタを好きになったんや…」


「愛してるで、グルさん。」


「…俺も愛している、トン氏」




…あぁ、こんなに幸せでいいのだろうか。
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