DC小説
□T
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「……そーいやぁ……」
今朝方の首都高で起きた事故を思い出す。
「どうしたの、雄飛さん」
「今日の未明に、首都高で事故があっただろー?」
「うん。ニュースで観たよ」
「現場からここは、すげー目と鼻の位置にあるよなぁ。もしかしたらよー、その事故に巻き込まれた人なんじゃねーのかぁ?」
「……やっぱり、雄飛さんもそう思う?」
やっぱり、だって。
すでにこいつは、なにかしらの確信をもっているようだ。
「最初見たときは、フロントガラスの破片が服についてたんだ。それから、少しだけどガソリンの臭いもしたよ」
「じゃー、もう決まりじゃねーか。なーんで警察に通報しないんだぁ?」
「あの人が拒否したんだよ。理由は……自分でも分からないみたいだけど」
それはすなわち、本能のレベルで警察に知られてはまずいなにかをもっていると、自身で認識しているということか。
あの女は、警察の敵? 犯罪者か?
「だから、あの人の記憶の手がかりになるものを探してたところなんだよ」
「ふーん。なーんか、ふつーにただ遊んでるようにしか見え……って、どこいったぁ? あいつら」
「え?……あれっ!?」
振り返ってみれば、先ほどまで騒がしくしていたチビッ子たちの姿が消えており、ベンチに座ってのんびりと鳩とたわむれる阿笠博士の姿しかなかった。
「博士! あいつらはどこだ!?」
「い、いや。彼女を連れてどこかへ行ってしまったよ」
「ったく、なにしてんだアイツらは!」
コナンが携帯で連絡をとろうとする。しかし、相手が電話に出る気配はなかった。
「もしかして、観覧車じゃない? あの子たち、乗りたがっていたから」
「あー。どうやら、そうみたいだなー」
あせるコナンの肩を叩き、上を指さした。
ゆっくりと登っていくゴンドラの1つに、チビッ子たちと女性が乗っているのが見えた。
「くそっ!」
コナンが駆け出す。
いや、でも、どうあっても追いつくのは不可能だろう。むこうはすでに、ゴンドラの中なのだから。