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□FはフレンドのF
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他の1年の様子を見ると、灰羽くんのように楽しみにしている人もいれば、芝山くんのように緊張気味な人もいる。それは一様に、強豪校と呼ばれる梟谷と戦えることに対するリアクションである。
しかし、自分は少し違う。
「こんなに早く会えるなんてなぁ」
「え?」
つい口を滑らせてしまい、そばにいた芝山くんに聞かれたが、なんでもないとはぐらかしておいた。
***
練習試合当日。
今回の会場は、梟谷の体育館。なので、こちらがバスで向かう。お菓子はたんまり仕込んできましたよ。
「はい、灰羽くん」
「お、なにくれんの?」
「みんなに回してね」
「オッケー!」
「芝山くん、酔い止め忘れた?」
「ううん。飲んできたけど、いつもあんまり効かないんだよね」
「じゃあ、ガムをどうぞ。噛んでたら少しはマシになるんだって」
「そうなんだ。ありがとう」
「蜜森、2つもらってもいい?」
「いいよー」
「あ、ずりぃ! 俺も俺も!」
後ろの席の灰羽くんに、一口チョコのバラエティーパックを渡して回してもらう。隣の酔いそうな顔色の芝山くんには、爽やかミントガムを。
「おい。チョコ回してきたやつ誰だ」
「はーい」
「やっぱお前か蜜森! 遠足じゃねーんだよ!」
「俺も2つもらっとくわ」
「じゃあ俺もー」
「なんで!?」
後半の方の席に座っていた上級生たちの方にまで回っていった頃、山本さんの説教が飛んだ。便乗してきた夜久さんと黒尾さんのおかげで助かったけど。
そんなこんなで、あっという間にバスは梟谷学園高校に到着。降りた瞬間に山本さんに頬をつねられた。
「結局お前ももらってただろ?」
「違うっスよ! あれはクロさんが押しつけてきたんじゃないスか!」
「ちょうど行き渡ってよかったです」
「お前は少し反省しろ!」
片方の頬だったのが、両方の頬を思いきり引っ張られた。おお、伸びる伸びる、じゃなくて黒尾さん。頬の柔軟性は確かに自信あるけど。助けて。