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□木兎さんの場合
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「2人いたマネージャーが、来年度からは一気にいなくなるのは部としては痛手です。蜜森なら、レギュラーの方たちとはすでにほとんど打ち解けていますし。他の部員ともすぐに仲良くなれるはずです」

「おいおいおいおい。お前までなに言ってくれちゃってんの?」

「いえ。ただのたとえ話ですよ」



赤葦の珍しく挑発するような態度に、黒尾は小さく舌打ちをする。

あ、今笑ったな、赤葦のやつ。こいつも色んな意味で怖えーよなぁ。知ってるけど。



「でも、そこまで黒尾さんがあの子に入れ込んでるとは思いませんでした」

「あー……まー確かに? ドジっ子だし天然だしときどき言葉通じないときもあってめんどくさい子ですよ。けど、仕事面じゃ初心者にしちゃあそこそこ優秀だからな。元々自分から志願して入ってきてくれたわけだし、主将としては大事に見守ってやんねーと」

「分かります。手のかかる子ほど可愛いというやつですね」

「お前ちょいちょいお母さん的ポジション主張してっけど、なんなのそれ」



手のかかる子ほど可愛い。それには大いに納得だ。加えて、あの人懐っこい笑顔。良くも悪くも、色んな意味で強敵かもしれない。



「ところでお2人とも、そろそろ上がりましょう。蜜森が食堂で俺らの夕飯を用意して待っているはずです」

「お、そうなのか? んー……しゃーねぇ。今日はここまでにすっか!」



まだ練習したりないけど。喜んで、と言って付き合ってくれた蜜森を待たせすぎるのはよくない。なにかが間違えば、うちに来るかもしれない大事な後輩でもあるわけだしな!



「黒尾ー」

「飯の後は付き合わねぇからな」

「ちげーって。さっきは冗談つったけどよ、ぶっちゃけ俺らはいつでも大歓迎だぞ」



お前らがあいつを見放すようなことがあれば、いつだって。

腕を組んで笑って言えば、黒尾も言ってろ、と言いつついつもの悪い笑顔を浮かべていた。




続く
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