呪術小説
□修行と戯れと
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「はーい。オレちゃんの勝ちー」
「ずりぃぞ!! 騙し討ちなんて!!」
「お前、それ呪霊相手でも言うのか? 正々堂々と戦えって? そんな道理が通じるとでも?」
「ぐぅ……!」
虎杖は打たれた顎をさすりながらも、なんとか「ぐうの音も出ない」ほどではないというアピールなのか、奇妙なうなり声を出していた。面白い。
「じゃ、敗者の虎杖ちゃんは勝者のオレちゃんの言うこと1つ聞いて下さい」
「はいはい。どうぞなんなりと!」
ヤケクソ気味にその場にあぐらをかいて座りこんだ虎杖の手に、俺はある物を乗せた。
「……なにこれ?」
「ピアッサー」
「へっ!?」
「右はまだだったから、いっそのこと開けちまおうと思って」
「俺がお前の耳に穴開けんの!?」
「穴開けるって言うな。ピアスをつけるって言え」
「同じじゃん!!」
最初はそれでも抵抗があったので左耳だけにしておいたのだが、やはり両耳にしている方がバランスいい。前々から誰かに頼もうと思っていたのだ。
「ってゆーか、なんで俺!?」
「自分でやったら微妙にズレちまったんだよ」
「伏黒に頼めばいいじゃん! 一番仲いいんだろ!?」
「よく知ってんなー。いや、仲いいからこそ頼めないんだよ」
「なんで!?」
「伏黒ちゃんは、昔のオレちゃんを知ってるからさ。頼んでも絶対嫌がるんじゃねぇかなって思って」
「……昔の汐月?」
「そ。ぐるぐるメガネに必勝ハチマキつけて学ラン着たガリ勉野郎……とまではいかないけども」
「汐月がガリ勉!? 全然想像できねぇんだけど!」
「自分で言ったからアレだけど、そんな笑うことねぇだろうに」
動揺していた気持ちが消し飛んだようで、虎杖は腹を抱えて笑っていた。
「あーもう。分かったよ。汐月が勝ったらって約束だもんな。けど俺、ピアッサーなんて使ったことないからズレない保障なんてねぇぞ?」
「大丈夫。オレちゃんは虎杖ちゃんを信じてる」
「そんな自信満々に言われるとすげープレッシャーなんですけど……」
先に虎杖にマーカーを渡して、開ける位置に印をつけてもらった。