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□プライドでは腹はふくれないけれど
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「追いかけるより追いかけられる方がプレッシャーあるってヤツじゃないスかね」
「……そんなん感じるタマか? あいつ」
「じゃあさー蜜森。お前から見て、メガネくんってどんな奴に見えた?」
光太郎さんからの突然の質問に一瞬きょとんとしつつ、腕を組んで斜め上に視線を向けながら考えた。
「……一言で言うと、最低限。言われたからやってます感がハンパないっていうか。全然楽しそうじゃないっスよね」
光太郎さんが納得したように二度頷き、黒尾さんは頭をかいていた。京治はいつもどおりの無表情だ。
別に、楽しまなければいけないというわけではない。本人が納得できているのなら、自分の意思なしに人から言われたからという理由でなにかをやることは、絶対に悪いとは言えないだろう。なぜなら、人には人の考えがあって、それは今までの経験とか周りにいる人から教えられたこと――今まで身を置いてきた環境などによって変化するものだからだ。
月島がどういう環境で育ってきて、今なにを考えているのかは分からないから、口を出すつもりはない。ただ、「楽しい」という感情があると少なからずモチベーションにつながるから、少しもったいないとは思う。
翌朝、少し寝坊して、1人で顔を洗いに水道に向かった。
「あ」
「……!」
なんの因果か、月島ともう1人、よく彼と一緒にいるそばかすが特徴の男子がちょうど出てきたところだった。
「おはよう、ございます」
「おはよ。昨日はありがとな。ってか、ごめんな。無理くり付き合わせちまって」
月島は目を合わせようとせず、興味なさそうな顔で「別に、大丈夫です」と答えた。
「なんか光太ろ……木兎さん、お前のこと気に入ったっぽいからまた誘われるかもしれないけど、嫌だったらはっきり断ってくれな」
「……あなたは」
そこで別れるつもりだったが、ちょうど彼らの横を通りすぎたところで月島がぼそりと呟いたので、立ち止まった。
「なんで、そこまでするんですか」
「うん?」
「自主的にペナルティをこなしたり、自主練しないのに無駄に居残りしたり。一体、なんの意味があるっていうんですか」
「ちょ、ツッキー失礼だよ」
俺は振り返り、月島もといツッキーと正面で向き合った。眼鏡の奥に見える瞳は、なにか迷っているような、複雑な心境を映し出しているようだった。
「それは後輩として聞いてる? それともただの興味本位?」
「……興味本位ですけど」
「あ、そう」
それだけ確認すると、他に水道に用がある人が来たときに邪魔にならないよう、少し外れたところに移動して、2人を手招きした。
「俺はさ、高校からバレー始めた素人なんだよ。中学は陸上部だったんだけど、ずっとほったらかしにされてたから大会にも出たことなくて」
「はぁ」
「だからぶっちゃけ、めちゃくちゃスポーツできるんならなんでもよかったんだよ。バレーじゃなくてもなんでも。進路考えてたときに、たまたま梟谷が目に入ったってだけ」
「よ、よくそれで続けられますね」
興味なさげな月島に対し、そばかす君は顔を引きつらせていた。